2000 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの山地・森・草原における環境をめぐる「地方の知」と政策に関する人類学的研究
Project/Area Number |
12571019
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
稲村 哲也 愛知県立大学, 文学部, 教授 (00203208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 康弘 愛知県立大学, 情報学部, 助教授 (70222065)
川口 彰義 愛知県立大学, 文学部, 教授 (90073585)
古川 彰 愛知県立大学, 文学部, 教授 (90199422)
本江 昭夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (30091549)
結城 史隆 秀明大学, 国際協力学部, 教授 (80210582)
山本 紀夫 国立民族学博物館, 民族学研究開発センター, 教授 (90111088)
岩田 修二 都立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60117695)
米本 昌平 三菱化成生命科学研究所, 社会生命科学研究室室長, 室長
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Keywords | モンゴル / ブータン / ネパール / ヒマラヤ / 国家体制 / 市場経済化 / 環境 / 少数民族 |
Research Abstract |
今年度は、モンゴル、ブータン、ネパールにおいて現地調査を実施した。モンゴルでは、研究代表者及び研究分担者の川口彰義と鈴木康弘が調査を行った。研究代表者は、モンゴル最北部タイガ地域においてトナカイを飼養するトゥバ族の社会、モンゴル西部で農業と遊牧に従事するカザフ族の社会などの調査を行い、国境地域に生きてきた少数民族である彼らが、国際関係(前者にあってはソビエト連邦との関係、後者にあってはカザフスタンとの関係)及び国家体制(モンゴルの社会主義から市場経済へ)の変動にどのように対応してきたかを解明した。社会関係の変容とともに、彼らは環境への適応、環境利用・保全のシステムを変化させてきた。また、川口は国家体制移行期における教育の変化を調査し、鈴木はモンゴル南部をホブド県からウランバートルまで横断し、自然環境の調査を実施した。 ブータンでは、開発が進んでいるネパール・ヒマラヤと比較して環境と森林がよく保たれている。その実態を明らかにするため、研究分担者の岩田修二が自然環境(地形、土壌、植生など)、伝統的環境利用・保全システムの調査を行った。 ネパールでは、研究代表者及び研究分担者の古川彰が、ネパール・ヒマラヤのソルクンブ地方においてシェルパ族の社会の現地調査を行った。ソルクンブ地方にはクラン(氏族)集団による伝統的な森林保全システムがあるが、森林保有の形態が数年前に始まった新たな国家政策によって揺らぎ始めており、その過程で地域における政策に関わる合意形成とがどのように行われていくのかを調査した。ODAやNGOによる国際的な開発や援助が与えている影響も調査した。地元住民からの聞き取りに加え、森林組合、行政当局等の膨大な文書資料(議事録など)を得ることができ、成果は大きかった。今年度は一部の研究分担者が研究日程の都合上現地調査に参加できなかったが、来年度はより包括的な共同研究を実施することにより、今年度得られた基礎的な資料に基づいた大きな総合的研究成果が期待できる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 稲村哲也,バトトルガ,スフバートル: "国家体制の変動と辺境に生きる人々-モンゴル・トナカイ遊牧民「ツァータン」の世界から"愛知県立大学大学院国際文化研究科論集. 2. 67-102 (2001)
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[Publications] AGETA,Y.,IWATA,S.,YABUKI,H.,NAITO,N.,SAKAI,A.,NARAMA,C.,and KARMA: ""Expansion of glacier lakes in recent decades in the Bhutan Himalayas," in NAKAWO,M.,RAYMOND,C.F.,and FOUNTAIN,A.(eds.) : Debris-Covered Glaciers"IAHS Press, Oxfordshire, UK. 288 (2000)