2002 Fiscal Year Annual Research Report
荘園絵図のイコノグラフィと景観表現に関する美術史的研究
Project/Area Number |
12610063
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Research Institution | KYOTOCITY UNIVRTSITY OF ART |
Principal Investigator |
中村 興二 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (50000360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出田 和久 奈良女子大学, 文学部, 教授 (40128335)
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Keywords | 荘園絵図 / 寺社境内図 / 景観 / 美術史 / イコノグラフィ / データベース |
Research Abstract |
最終年度の本年度は報告書の完成を目指して、九州北部の寺社境内図の原本調査と現地景観調査および原本調査を済ませて現地調査が残っていた備中国足守荘比定地の現地景観調査を実施するとともに資料整理、景観要素データベースのデータ入力を進めた。データベースについては試用した結果、抽出した景観要素画像の一覧性を高めることとデータの量的拡充が今後の課題として残った。景観の表現様式・形式については荘園絵図等の制作年代が明確でないものも多くあるためと景観要素のデータ化と入力が相当に労力を要したためデータ化して入力できたデータ量が十分でないこともあり、必ずしも当初の狙い通り確かな見通しを得るまでには至らなかったが、時系列的な把握がある程度有効であるとの見通しを得た。データ作成に多大の労力を要するというデータベースの構築自体につきまとうジレンマの克服が大きな課題であることが確認された。これらの問題解決の方向性としては、有効なデータ項目の十分な検討による必須データ量自体の削減の工夫および古文書を使用した文字の切り出しの自動化の試みなどが参考になりそうである。また、この種のデータベースの公開には、所蔵者の権利や写真の版権所有者等との関係があり、データベース化の有効性は認められているものの、権利関係において解決すべき問題が残されていることも改めて認識した。 また、本研究では荘園絵図や寺社境内図の比定地に赴いての現地景観調査を重視して、これらの絵図における景観等の表現を詳細に美術史的背景とのかかわりで追及したが、実際の絵図制作者が現地を知っているか否か(より直接的には現地を訪れて製作したか否か)は区々であることも確認された。
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