2000 Fiscal Year Annual Research Report
ケアサービス分野における社会的企業の社会政策的意義に関する国際比較研究
Project/Area Number |
12610180
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
塚本 一郎 佐賀大学, 経済学部, 助教授 (90274571)
|
Keywords | 福祉国家 / 社会政策 / 公共政策 / 社会福祉 / 介護 / NPO / 協同組合 / 福祉ミックス |
Research Abstract |
混合経済体制におけるケアサービス分野の社会的企業の社会政策的意義を.福祉国家の変容と関連づけながら,理論的実証的に明らかにすることが本研究の目的である。今年度は,この研究目的を遂行するための理論枠組の形成や作業仮説の設定に向けた準備作業,イギリスと日本,スウェーデンのケアサービス分野の社会的企業に関するデータ収集を中心に研究を行なった。併行して調査も実施し,国内については,三重県の「三重県高齢者生活協同組合」と神奈川県の在宅福祉団体「愛コープ」等に関する聞き取り調査、イギリスについては,現地調査を実施し,ボランタリー組織の全国連絡組織「NCVO」と高齢者支援団体「エイジコンサーン・イングランド」において資料収集を行なった。 今年度の研究によって,福祉分野におけるサービス供給主体の多元化と準市場の導入という近年の公共政策の変化を背景として,従来公共部門が担ってきたケア,サービス分野において,社会的企業等の民間非営利部門の役割がますます重視されるようになっているという点を確認することができた。とりわけ,社会的企業のような住民参加型企業を通じたケアサービスの供給方式には,公共政策における市民参加モデルとしての意義があると考えられる。しかし,一方で,公共政策と民間非営利部門との関係が密接になるに伴い,民間非営利部門が公的な制度や契約の枠組に過度に適応することでボランタリーな組織文化の変質が生じているという問題点も確認できた。これは「契約文化」などと呼ばれる現象であるが,日本でも介護保険の指定事業者となった社会的企業の間において,こうした傾向が現れつつある。以上が本年度の研究において得られた知見である。
|
Research Products
(2 results)