2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610364
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Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
近藤 正子 (金山 正子) (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター・文書修復室, 研究員 (20311491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 美知子 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター・研究開発室, 研究員 (70223279)
五代 雄資 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター・情報室, 研究員 (10195927)
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Keywords | 彩色資料 / 絵図面 / 劣化損傷状況調査 / 図面用紙 / 素材分析 / 顔料劣化 / 紙劣化 / 公文附図 |
Research Abstract |
幕末から明治初期の絵図面などに使われる顔料は、従来使われてきた岩絵具とはことなり、人造顔料や水性顔料やインクなどが多用されてくる。また、その支持体となる紙においても、和紙から洋紙、あるいは紙以外の素材でできた特定の図面用紙の使用など、大きな変革の時期でもあった。これらの使用例を客観的に把握するため彩色資料劣化損傷状況の調査法を確立し、調査を実施し、また、それらの保存方法について検討を加えた。 具体的には、調査法としては、膠絵具・水彩絵具の識別と劣化判断、分光測色計を使っての現在の色目の数値化、マイクロスコープ・走査型電子顕微鏡による素材の繊維観察、などを導入した。 顔料の劣化観繁の結果は、(1)胡粉の剥離(2)朱の剥落・黒ずみ(3)合成群青の剥落(4)岩緑青の剥落・緑青焼け(5)エメラルドグリーンで彩色された箇所の焼け(6)銀箔のくすみ・散り、(7)金箔の剥落(8)真鍮の銅サビ、などの劣化症状が確認された。これらの症状については、江戸期の絵図面とは違いがみられ、明治初期の絵具類の組成分析と劣化の構造については、今後の研究課題である。 また、支持体の研究としては、和紙以外の新しい図面用紙として、明治初期に建築関係の外国人技師らによって持ち込まれた、薄手の亜麻や木綿のぼろ布で製紙されている洋紙や、木綿糸を平織りにしてサイズ剤(膠やゼラチン・卵白など)を塗った布目状の図引き紙などを分析した。図面用紙は、明治期以降から現代にいたるまで、その変遷が多岐にわたり、素材研究はいまだ進んでおらず、引き続いての観察・分析・研究が必要な分野である。 なお、H13年度において(財)元興寺文化財研究所へ独立法人国立公文書館所蔵「公文附属の図及び表」の状態調査が委託され、研究成果はその際の分析結果をふまえた。
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[Publications] 金山正子: "南方熊楠のつかった記録材料"熊楠研究. 3. 114-131 (2001)
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[Publications] 金山 正子: "公文書に見られる記録材料の変遷"兵庫のしおり. 3. 46-62 (2001)
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[Publications] 金山正子: "国立公文書館所蔵公文書等保存状況等調査-第二次調査報告"アーカイブス. 6. 28-53 (2001)
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[Publications] 金山正子: "紙資料を保存する-状態調査法と保存管理プログラムの策定"元興寺文化財研究所研究報告. 110-120 (2001)