2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610383
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
岩井 經男 弘前大学, 人文学部, 教授 (10113771)
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Keywords | ポンペイ / ローマ / 中央と地方 |
Research Abstract |
平成13年度はイタリア地方都市から見たローマ社会像を再構成することをテーマとし,そのため,ローマの一地方都市ポンペイの社会の実態解明をめざした。ポンペイには都市の政治を支配した数十の有力家門や,また,アウグストゥスの祭祀を差配するアウグスターレスと呼ばれた解放奴隷層が確認されている。都市郊外に数十残る豪華な墳墓の内,少なくとも十以上が解放奴隷出身の家続のものであることが知られている。解放奴隷層の社会進出と商工業の発達は密接に考えなければならない。ローマ経済の大問題である商工業の発達をどの程度に見るか,という点について,ポンペイの事例はこの問題の再検討を迫っている。考古学資料と碑分資料により数代にわたる家族の歴史が再構成できた。ポンペイ内の社会ばかりでなく,ポンペイとローマの関係も重要である。ポンペイから,ローマ中央の元老院に入った人物は確認されていない。有力家門はローマ全体の身分からいえば騎士身分であったろう。とすればポンペイはきわめて標準的なイタリア地方都市であったと見ることが出来る。特に他のイタリア都市と比べてローマと結びつきが強いとはいえない。フィンランドの研究者カステロンによれば,ポンペイの有力家門はローマとの関係(ローマの有力者,例えば皇帝との個人的関係)から勢力を伸ばせたと考えるが,私の分析では明確にそのような結論は導き出せなかった。 また,ポンペイにおいて,今までの調査を補完する追加の調査を実施した。
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