2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610391
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
柳原 邦光 鳥取大学, 教育地域科学部, 助教授 (90239814)
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Keywords | 二つのフランス / 世俗化 / 非キリスト教化 / 非キリスト教化運動 / フランス革命 |
Research Abstract |
今年度の研究実施計画として、以下の二点を目標に定めた。一つは、フランス革命を経て顕在化した「二つのフランス」について、これまでの研究成果を踏まえて、このような見解の問題点を析出すること、二つめは、旧体制期について、カトリック教会による改革をめぐって文化的な争点となっていたものを確認することである。 第一の課題について、「二つのフランス」は、世俗化・非キリスト教化現象と革命支持(特に共和主義)との密接な関連、カトリックと政治的保守主義との結合を示しているが、この見解は、基本的にはデータを統計処理し、それを地図化することによって証明されている。したがって、詳細な地方史研究に照らしてみたとき、こうした一種の図式には当てはまらない事例が確認されるのは、驚くことではない。とはいえ、明確にどちらかのフランスに含まれとされている地方で、この組み合わせが存在しないところが少なからずある。たとえば、「共和主義のフランス」でも、革命前に世俗化や非キリスト教化の進展が確認されず、むしろカトリック信仰が強固であった地方がある。また、革命期に革命の理念を逆手にとってカトリック信仰を守っていく地方もある。こうした事例から、このような結合の背景により複雑なメカニズムがあったことが推測される。 第二の課題については、革命前には、エリートはともかくとして、農民や民衆はなおも世界を呪術的に理解する傾向が強いことが確認できた。民衆の信仰世界において、呪術的な理解と聖職者の宗教とは微妙に絡み合った関係にあったようである。非キリスト教化運動の展開を見た「共和主義のフランス」では、革命前にカトリックの聖職者がこうした民衆の信仰世界を強引にカトリック化しようとしたために、逆にカトリック離れを招き、聖性が世俗的な価値の方へ転移していたとされているが、カトリック離れは必ずしも世俗化・非キリスト教化・聖性の転移に向かうとはかぎらない。この民衆心性と革命的な政治との関係については、第一の課題とも関連することであるが、呪術的な理解の仕方を重視して、慎重に考える必要があることがわかった。
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