2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610391
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Research Institution | TOTTORI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
柳原 邦光 鳥取大学, 教育地域科学部, 助教授 (90239814)
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Keywords | フランス革命 / 非キリスト教化運動 / 結婚の政治化 / 市民 / 聖職者の結婚 |
Research Abstract |
聖職者の結婚は最も過激な非キリスト教化現象であったと理解されているが、実際には、非キリスト教化運動以前にも以後にも見られたのであって、そのすべてを非キリスト教化運動で説明するわけにはいかない。本年度は、そこで聖職者の結婚がどのように理解されていたのかについて、運動以前と運動期にわけて検討し、そうすることで非キリスト教化運動の意味を多角的に分析することを試みた。 昨年度までの研究でフランス革命期になって結婚そのものの意味が変化したことが確認できた。結婚は人々との結びつきのなかで生きていくことを示す行為、「市民」であることの証しとなった。こうした結婚の政治化が進む中で聖職者の結婚についても多様な見方が現れた。非キリスト教化運動以前、社会と切り離された存在である聖職者を社会に統合する役割が結婚に期待されていた。ところが、運動が始まると、結婚は聖職者のアイデンティティを否定するものであるとする見方が現れ、結婚が強制された。聖職者という存在そのものの否定である。とはいえ、事態を詳細に見れば、聖職者の結婚に対する見方が前者から後者へ転換したとはいえない。確かに後者の見方が顕著ではあるが、前者が消えたわけではない。このことは、デパルトマンやディストリクト単位で行われた研究を参照するとより明かとなる。地域によっては聖職者の結婚=強制によるものとばかりはいえないのである。 運動期に聖職者の結婚が多数見られたという事実は、結婚=非キリスト教化という図式だけでは説明できないようである。事態はかなり複雑で、聖職者の結婚をどの地域でも同じ意味をもった現象として一律に解釈するのは適切でない。聖職者の結婚を通して非キリスト教化運動のありようやその地域的特色を照らし出せるかもしれない。民衆信仰と非キリスト教化運動の関係を真正面から解明することはできなかったが、聖職者の結婚という現象はさまざまな地域におけるキリスト教信仰のありかた、非キリスト教化運動の地域的差異を考察する手がかりになりうると考えられる。
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