2001 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀フランス農村における市民的規範の受容に関する研究
Project/Area Number |
12610392
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
槙原 茂 島根大学, 教育学部, 助教授 (00209412)
|
Keywords | 農村 / 市民 / 農民 / アソシエーション / ソシアビリテ / 農業組合 / 民衆教育 / 文明化 |
Research Abstract |
平成13年度の研究は、以下の二つの系列に分けられる。 1.19世紀フランス農村のアソシアシオン史について、これまでの研究を総合した学位論文「近代フランス農村におけるアソシアシオンの杜会史」を広島大学大学院文学研究科に提出、平成14年1月に学位を授与された。本論文は、アソシアシオンassociation(結杜、任意団体)の生成・展開過程を追うことによって、19世紀フランス農村社会の近代化、とくに民主制の定着化の問題を考察した。とくにアソシアシオン的結合を媒介として、国家、政治的支配層の統治のベクトルと、地方の民衆、農民の主体的な実践とがせめぎあい、接合される点に着目した。これに加筆・修正を加えて『近代フランス農村の変貌-アソシアシオンの社会史-』(刀水書房刊)を出版した。 2.上記の総合的研究の後に残された課題として、アソシアシオンとコルポラシオンcorporation(同業組合)との組織上、概念上の区別について再考することがある。フランスにおいて職業組合の結成権が認められた1884年、結社の自由が認められた1901年当時、アソシアシオンに関して共通の理解、共通の理念があったわけでは決してなかった。この問題に関して、2001年度広島史学研究会大会西洋史部会で「アソシアシオン理念のスペクトル-フランス農村の結社運動に関連して-」と題する発表を行った。また、フランス現地での調査において、世紀転換期に活躍した農民作家エミール・ギヨマンの組合活動家としての側面、農村アソシアシオンヘの係わりに関する資料収集を行った。 関連する研究として、松塚俊一のイギリス民衆教育史に関する業績について、フランスとの比較の観点から論評したものを発表する予定である。
|