2002 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀フランス農村における市民的規範の受容に関する研究
Project/Area Number |
12610392
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
槇原 茂 島根大学, 教育学部, 教授 (00209412)
|
Keywords | 農村 / 市民 / 農民 / アソシエーション / ソシアビリテ / 農業組合 / 民衆教育 / 文明化 |
Research Abstract |
平成14年度の研究においては、これまでの研究をまとめた成果『近代フランス農村の変貌-アソシアシオンの社会史-』(2002年2月,刀水書房刊)が残した課題を検証し、関連する新たな研究に着手した。拙著が残した課題は主に二つある。まず、農村民衆が農業組合であれ読書サークルであれ、多様なアソシアシオンassociationに主体的に参加する際の契機や意識が十分に明らかにされなかったという点がある。もう一点は、アソシアシオンとコルポラシオンcorporationとの組織上、概念上の区別、民主制とのかかわりを再考することである。いずれも、農村社会への市民的規範の浸透を解明する際に欠かせない論点であるが、それぞれに本格的な資料分析と考察が必要であることがわかったので、14年度は前者の問題に焦点を絞ることにした。 この問題にアプローチするためには、フランス現地の文書館での地道な史料調査によって個別のアソシアシオンの設立、発展の過程をつぶさに跡づける方法が有効であると考えられるが、少なくとも半年以上の長期にわたる滞在を必要とするため不可能であった。そこで、これと並んでもうひとつ有効と考えられる方法を採った。つまり、農民自身の残した記録(刊行されたもの)を調べる方法である。このような観点にとって興味深い事例、研究対象として、世紀転換期から20世紀前半にかけて活躍した農民作家エミール・ギヨマンの生涯と社会的な活動がある。これまでのところ、彼の文学作品、農業組合運動、そしてとくに手紙の交換によるソシアビリテ(社会的結合と交渉)の形成に関する文献・資料をほぼ収集し終え、現在、それらを分析しているところである。近々その成果の一端を発表する予定である(比較教育社会史研究会,2003年4月5日)。 なお、仏英の民衆教育史の比較という視点から、松塚俊三のイギリス民衆教育史に関する業績について論評を試みた。
|