2000 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス産業革命前夜の工芸と産業:工芸振興協会による染色業振興策
Project/Area Number |
12610397
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
大野 誠 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (60233227)
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Keywords | 工芸振興協会 / 染色業 / アカネ栽培 / アカネ栽培振興法 |
Research Abstract |
1754年にロンドンで設立された工芸振興協会は、イングランドでの産業振興をめざして、農業、植民地貿易、製造業、化学、美術工芸などにかかわる様々な事項・物品に懸賞金を交付する活動を行ったが、なかでも染色業への振興は設立当初から重視されていた。振興策は大別すると、第一に原材料の調達法を改善し、第二に織物の絵柄を担当する若手工芸職人を養成することであった。本年度の研究が対象とするのは、前者についてである。 第一の点に関しても様々な事項が懸賞項目になったが、初期の20年間にわたって一貫して続けられ、最も多額の資金が投じられたのは、赤色染料の原料となるアカネの栽培を国内で振興することであった。当時使われていたアカネのほとんどはオランダから輸入されており、その状況を改善することが目指されたのである。そのために、協会は会員の貴族や庶民院議員の協力を得て、「アカネ栽培振興法」を議会で通過させた。この法と協会の懸賞金により、一時的ではあるが、確かに成果が見られた。アカネはイングランドでも生産されるようになり、国内での生産量は増大した。しかし、それは長続きしなかった。アカネ栽培はイングランドでも可能であったにもかかわらず、結局これが根づかなかったのは、栽培以外の点に問題があった。アカネを染料にするために不可欠な乾燥施設の建設にコストがかかりすぎたのである。言い換えると、インフラストラクチャの整備がなされないまま、栽培だけが重視されたのである。
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