2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610417
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Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
深澤 百合子 札幌国際大学, 人文・社会学部, 教授 (90316282)
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Keywords | 北海道 / 東北 / 十勝 / 金属 / 擦文 / 竪穴住居 / 砂金 |
Research Abstract |
本年度は浜大樹2遣跡とその周辺地域の継続調査を行った。当該地域の十勝南部太平洋岸は、海岸段丘上に広範囲にわたり大規模な竪穴住居群が存在している。それらの分布範囲は確認したものの、測量調査は全域で終了していない。そのため測量調査を継続して行った。 本研究の初年度に、オホーツク土器を表面採集するなど、当該地域とオホーツク、千島方面との接触関係についても、注意を払ってきたが、本年度の測量調査中に2ケの円形窪地が接続しているような眼鏡状の竪穴遣構を発見した。この遺構はもしかすると、シュムシュ島、パラムシル島やラサワ島などの北千島で報告されている「ダンベル型」といわれる竪穴ではないかと思った。本研究者は北千島の竪穴を実見した経験はなく、報告書の図面からの知識なので不安は残るものの、千島列島沿いに北海道大平洋岸を襟裳岬まで、一連の海岸ルートとして捉えることは、千島海流の流れを考えても無理なことではないと思える。本研究本来の目的は、北海道と東北の接触関係の解明であるが、海岸ルートの延長線上を東北地方太平洋岸まで向けると、新たな研究構想を組み立てることが可能となる。新たな展開を考慮し、このような特徴的な遺構の発掘調査を行うとともに、実際、北千島に出かけて行き、「ダンベル型」と言われる竪穴がどのようなものであるのか確認する必要がある。 今年度の浜大樹2遺跡の竪穴住居の発掘調査は、東西トレンチを掘り、東トレンチ表土直下から近世陶磁器と思われる破片が出土した。江戸時代、この辺りは十勝場所のうちで、松前藩が歴船川での砂金採取を1635年頃からはじめたという記録がある。当縁川をはさみ、浜大樹2遺跡の対岸は相保島という所で、ここまで歴船川から金掘りの跡があると言われている。この海岸沿いはおそらく江戸時代に砂金採取の人々が、何らかの形で関わっていたであろう。 浜大樹2遺跡の発掘調査からは、唐川城と関連する鉄精錬や鍛冶の具体的証拠は得られていないが、鉄ではなく、金掘り集団という砂金採取の開始がいつ頃まで遡るのか、東北との関係を調査する必要がある。唐川城の鉄滓の分析や、炭化物の分析、年代測定などは結果を得られたので別に報告する。
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