2000 Fiscal Year Annual Research Report
フランス現代詩における詩空間の閉塞化とその乗り越えの可能性に関する歴史的研究
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12610520
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川那部 保明 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 教授 (10169740)
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Keywords | je / on / フィリップ・ジャコテ / アルチュール・ランボー / 規範性 |
Research Abstract |
本年度は、フィリップ・ジャコテの詩における"on"の現れ方を中心に考察をすすめる計画であった。この計画に従い書籍等を中心に資料を集めるとともに、 1)ジャコテの諸詩篇のうちでも"on"が特徴的に現れている詩を具体的に選び出し、"on"がどのような詩世界を可能にしているかを確認すること、 2)そのことと、ジャコテの詩行為全体との間にどのような連関が成り立っているかを見定めること、 3)さらに付加的なこととして、ジャコテが俳句とともに強く意識していたランボーの詩意識とのつながりを探ること、を作業の方向性とした。それぞれの視点からの考察は、各々次の論文あるいは発表においてその結果を示した。すなわち、 1)「フィリップ・ジャコテ『ルソン』の語るもの」、平成13年5月、『キリスト教文学研究』18号(印刷中) 2)「フランス現代詩と超越性-フィリップ・ジャコテとその同時代の詩人たち」、平12年(10月14日)、日本キリスト教文学会月例会(筑波大学学校教育部) 3)「アルチュール・ランボーの<我は一個の他者である>について-jeの彼方としてのon-」、平13(3月5日)、「価値語の様態と構造」研究会(東京ガーデンパレス)である。 この結果、アルチュール・ランボーにおける"je"と"on"の意識化によって"je"は明らかにひとつの規範性を帯びた時代(17世紀から19世紀にかけて醸成されてきた)の指標として存在していたこと、その規範性のもとでのポエジーを"je"のポエジーと呼ぶとすると、20世紀のフランス詩はその規範性とポエジーとの示す世界の臨界点の向こう側("on"のポエジーと呼びうる)を志向しているということ、その志向の延長上にジャコテの詩世界があるといえること、を確認した。
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