2002 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀フランスにおける、著作権・印税システムと作家の関係について
Project/Area Number |
12610521
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 志朗 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90138610)
|
Keywords | フランス文学 / 著作権 / 活字メディア / 社会史 / バルザック / ゾラ |
Research Abstract |
本研究の最終年度であった。 印税システムを「普通選挙」になぞらえて、作家は市場を介して、購入行動によって読者から作品の価値の認定を受けるとした、エミール・ゾラの思考の解析に焦点を当てた。そのため秋には、ゾラがかつて会長をつとめた、「フランス文芸家協会」の調査もおこない、着実な成果を得た。「著作権」「一括買い取り」「印税」といったシステムと対峙した際の、文学者・芸術家の側の象徴的なふるまいを物語る言説も、かなり集成することができ、最初の試みとしては一定の成果を獲得できたのではないか。 なおゾラに関しては、宮下志朗・小倉孝誠編《ゾラ・セレクション》全11巻、別巻1(藤原書店)の刊行を開始したことを特記しておきたい。日本では最初の試みであって、各方面の注目を浴びている。没後100周年を記念して、日本仏語仏文学会秋季大会(九州大学)においても、ゾラをめぐるシンポジウムを開催し、超満員の盛況であった(発表者は上記の編者のほか、柏木隆雄、吉田典子両氏)。また入門書として、宮下・小倉編で『いま、なぜゾラか』(藤原書店)を刊行した。 中世から現代までの、書物と社会のかかわり、読みのプラティックなどを主題として、これまでの成果をまとめ、『書物史のために』(晶文社)として上梓したが、類書が少ないせいもあって好評を博している。
|