2000 Fiscal Year Annual Research Report
小児1型糖尿病の発症前および発症早期における免疫療法に関する研究-新しい免疫抑制剤を用いた膵β細胞破壊の抑制-
Project/Area Number |
12670757
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
貴田 嘉一 愛媛大学, 医学部, 教授 (80093409)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戎能 幸一 愛媛大学, 医学部・附属病院, 講師 (00204313)
|
Keywords | 1型糖尿病 / NODマウス / 膵島炎 / FTY720 / 予防 / 免疫療法 / Tリンパ球 / 膵β細胞破壊 |
Research Abstract |
1型糖尿病の動物モデルであるNODマウスを用いて、新しい免疫抑制剤FTY720の膵β細胞破壊抑制効果を調べた。 (1)糖尿病発症抑制効果:膵島炎(insulitis)出現前の4週齢の雌性NODマウスおよび膵島炎出現後の10週齢の雌性NODマウスに、FTY720 1mg/kgを週2回経口投与し、40週齢まで観察した。対照群にはFTY720の溶解液である滅菌水を飲ませた。4週齢でFTY720投与を開始した群の糖尿病発症率は0%(0/19)であったのに対し、対照群では50%(10/20)が顕性糖尿病を発症した。また、10週齢でFTY720の投与を開始した群の発症率も0%(0/19)であったが、その対照群では83%(15/18)が糖尿病を発症した。なお、FTY720投与群、対照群ともに実験期間中に死亡したマウスはいなかった。 (2)膵の病理組織像(FTY720の膵島炎に及ぼす効果):4週齢と10週齢からFTY720あるいは水を経口投与し観察終了時まで糖尿病を発症しなかったマウスについて、その膵を摘出し病理組織学的検討を行った。FTY720投与群では4週齢および10週齢で開始した実験ともにすべてのマウスが糖尿病を発症しなかったが、それぞれ89%と94%に膵島炎の所見が得られた。これらの膵島炎の程度は対照群と比較して軽い傾向があったが、有意差はなかった。 (3)糖尿病発症後の生存期間延長効果:糖尿病を発症したNODマウスに対しインスリン治療を行わずFTY720のみを投与し、その生存期間を対照群と比較した。投与量、回数は先に述べた方法と同じである。糖尿病発症直後からFTY720を投与した群の生存期間は対照群に比し有意に長く、82%(9/11)が発症後100日以上生存し、36%(4/11)が150日以上生存した。一方、糖尿病発症対照群では100日以上生存したマウスは一匹もおらず(最高75日)、64%(7/11)が糖尿病発症後2カ月以内に死亡した。 (4)免疫学的検討:FTY720を投与した15週齢と40週齢のNODマウスおよびそれぞれの対照群のNODマウスの末梢血の白血球数、リンパ球数、脾細胞数および末梢血、脾、腹腔リンパ節のリンパ球サブセットを調べた。FTY720投与群の末梢血の白血球数、リンパ球数、脾細胞数は対照群に比し有意に低下しており、これらの現象はflowcytometryによるリンパ球表面マーカーの解析からTリンパ球の著しい減少に基づくものであることがわかった。腹腔リンパ節のリンパ球においてもTリンパ球の比率が有意に低下していた。 (まとめ)FTY720はNODマウスの糖尿病発症を完全に防止した。さらに、顕性糖尿病発症後に投与しても生存期間を延長することが示された。NODマウスの膵島炎出現後あるいは糖尿病発症後から投与を開始した実験で、明かな膵β細胞破壊抑制効果が得られたinterventionの報告はこれまでにない。FTY720はヒトの1型糖尿病においてもTリンパ球の減少を介して発症予防あるいは発症後の内因性インスリン分泌能を保護する作用を示す可能性がある。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 平井洋生,成能幸一,伊藤卓夫,貴田嘉一: "NODマウスの糖尿病発症の成因と糖尿病発症予防に関する実験的研究"愛媛医学. 19(4). 487-494 (2000)
-
[Publications] 日本糖尿病学会小児糖尿病委員会: "小児・思春期糖尿病管理の手びき"南江堂. 228 (2001)