2000 Fiscal Year Annual Research Report
心臓の房室心内膜床形成機構におけるPitx2の機能解析
Project/Area Number |
12670782
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
富田 幸子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (40231451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 誠 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (10075567)
北村 邦夫 三菱化学生命科学研究所, 先端研究, 主任研究員
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Keywords | Pitx2 / 心臓 / マウス胎仔 / 心内膜床欠損 |
Research Abstract |
ビコイドタイプのホメオドメインをもつ転写制御因子であるPitx2は、Rieger症候群の原因遺伝子として1996年Seminaらに発見された。Rieger症候群は常染色体優勢遺伝疾患で、主に虹彩委縮や緑内障を伴う眼の前房隅角の形成異常や歯の異常を示す。最近、この因子は脊椎動物の左右非対称性に関与することが明らかとなり、しかも左右非対称に関与する因子の一番下流にあると考えられている。北村らはマウスでPitx2遺伝子をクローニングし、Pitx2遺伝子欠損マウスを作成することに成功した(Development1999,126,5749)。このマウスは腹壁閉鎖不全、肺の右側相同、眼球陥没、腸管回転不全、顔面と歯の異常が認められ胎生14-15日に死亡する。このマウスはLacZがKock inされており、Pitx2がdeletionを起こしている細胞が青色になる。我々はこのマウスにヒトの完全型心内膜床欠損に類似した心臓形態異常を認め詳しく検討した。心臓では心房中隔一次孔欠損および正常な三尖弁と僧帽弁が形成されず共通房室弁が認められた。本マウスの心臓を発達に伴って観察したところ、胎生10.5日では右心室低形成、拡大した左心房が認められ、胎生11.5日では房室管部位が異常に突出成長し、この部分の房室心内膜床が異常に発達していた。胎生13日では三尖弁、僧帽弁は形成されず、主として左心室側に開口する共通房室弁を認めた。この他に両大血管右室起始、右心耳の左側並列、臍帯静脈や肝臓静脈の結合異常、低形成の脾臓を認めた。左右非対称に関しては、1本の心チューブが形成されるときPitx2は心チューブの左側に発現している。心チューブが右側にループ後、4つの部屋ができる時期には、Pitx2は心房、右心室の左側、流出路の左側に発現が認められた。しかしながら、Pitx2遺伝子欠損マウスでは心臓ループには異常は起こらないことを認めた。従って、Pitx2は心ループを右か左かに決定する現象には直接関与しないことが判明した。今回、見いだした共通不房室弁は、全てのPitx2遺伝子欠損マウスにおいて観察された。さらに、これはヒトの完全型心内膜床欠損に極めて類似していた。その観点から、この共通不房室弁は心内膜床欠損の病態発生の機構を明らかにする上で好個のモデルになると考えられ、今後さらに詳しく共通不房室弁の形成機構を明らかにする予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Saga Y. et al.: "Mesp 1 expression is the earliest sign of cardiovascular development. "Trends in Cardiovascular Medicine. (In press). (2001)
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[Publications] 宮川,富田幸子 ら: "心臓の発達と成長を制御する分子経路"発達心臓病学(第3版). 8-17 (2001)
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[Publications] 宮川,富田幸子 ら: "レチノイン酸受容体と発達心"発達心臓病学(第3版). 18-20 (2001)
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[Publications] 宮川,富田幸子 ら: "刺激伝導系の発達"発達心臓病学(第3版). 57-59 (2001)
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[Publications] Miyagawa-Tomita S. et al.: "Alterations in RAR and TGF-beta expression in developing hearts exposed to retinoic acid."Etiology and morphogenesis of congenital heart disease : Twenty years of progress in genetics and developmental biology.. 223-225 (2000)
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[Publications] Nakazawa M. et al.: "The similarity of ventricular function and morphology of embryonic heart of endothelin-1 knock-out and retinoic acid treated mice."Etiology and morphogenesis of congenital heart disease : Twenty years of progress in genetics and developmental biology.. 281-284 (2000)