2002 Fiscal Year Annual Research Report
心臓の房室心内膜床形成機構におけるPitx2の機能解析
Project/Area Number |
12670782
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
富田 幸子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (40231451)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 誠 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (10075567)
北村 邦夫 三菱化学生命科学研究所, 生命科学研究, 部長
|
Keywords | 先天性心疾患 / 発生 / pitx2遺伝子 / 心内膜床欠損 / 形態形成 / マウス胎仔 |
Research Abstract |
本研究で用いたpitx2欠損マウスは、3つのサブタイプpitx2a, pitx2b, pitx2cがあるホメオボックス転写制御因子pitx2遺伝子に共通するexon4の部分をLacZを含むターゲティングベクターで置き換えることによって作成された(北村ら、Development1999, 126,5749)。本マウスでは、ヒトのRieger症候群に似た特有の顔貌、眼の異常のほかに心奇形、腹壁閉鎖不全、腸管回転不全、肺の右側相同が認められ胎齢13〜14日で死亡する。我々はこのマウス胎仔心臓をもちいて心内膜床欠損について研究を行ってきた。心内膜床欠損は先天性心疾患のひとつで、ヒト新生児期では先天性心疾患の2〜4%、胎児期では10〜17%高く、またDown症候群児にみられる心疾患としては本症が40%を占めるが、その形態形成機構、原因遺伝子などいまだ不明である。前年度で本マウス胎仔心の房室心内膜床には充実した間葉細胞と癒合能力があることが判明した。今年度は心房に注目してLacZ発現と異常形態を発達にしたがって詳細に検討した。ヘテロ個体の心房内のLacZ発現は左静脈洞弁、一次心房中隔そして左静脈弁から一次心房中隔までの心房後壁部分と肺静脈開口部に限局して認められた。一方、ホモ個体では複雑な心房内形態が見られ、ヘテロ心房内形態と比べると鏡像構造をしており、肺静脈を含む大静脈がひとまとめになって心房の中央に流入していることが明らかとなった。マウス初期心臓ではPitx2発現が左静脈洞に発現していることが報告されている。胎齢9.5日では、左心房の後方にある左静脈洞にその発現がみとめられた。胎齢10.5日、11.5日でも同じように左静脈洞、左心房後壁にLacZ発現がみられるが、胎齢12.5日のヘテロ個体でその発現は右心房にシフトしていた。一方ホモ個体では、そのシフトは起こらず左心房の中央にのみ限局して発現していた。pitx2欠損マウスに見られる心内膜床欠損は、房室心内膜床組織が直接原因ではなく左静脈洞の右心房へのシフト停滞にあると考えられた。これらの結果から心内膜床欠損の形成には左静脈洞が重要な役割をしていることが示唆された。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Naruse M, Ishihara Y, Miyagawa-Tomita, et al.: "3-Methyl-cholanthrene, which binds to the arylhydrocarbon receptor inhibits proliferation and differentiation of osteoblasts in vitro and ossification in vivo"Endocrinology. 143(9). 3575-3581 (2002)
-
[Publications] Shen J, Nakanishi T Gu H, Miyagawa-Tomita S, Wu GR, Momma k, Nakazawa M: "The role of endothelin in oxygen-induced contraction of the ductus arteriosus in rabbit and rat fetuses"Heart Vessels. 16. 181-188 (2002)
-
[Publications] 鈴木淳子, 宮川-富田幸子, 小松敬子, 中澤 誠, 深谷 隆, 馬場國藏, 由谷親夫: "川崎病既往正常冠動脈の免疫組織化学的検討"Prog in Med. 22(7). 1624-1628 (2002)
-
[Publications] 今野結子, 富田幸子, 萩原啓実, 石原陽子: "マウス胎仔骨の発達におよぼす各種内分泌撹乱物質の影響"日本衛生学会雑誌. 57(1). 137 (2002)
-
[Publications] 今野結子, 富田幸子, 萩原啓実, 石原陽子: "ホ乳類の骨形成・分化に基づいた偽内分泌撹乱化学物質の健康影響評価"日本産業衛生学会雑誌. 44. 470 (2002)
-
[Publications] Sugimura H, Miyagawa-Tomita S, Nakazawa M: "Effect of the cardiac neural crest for the coronary angiogenesis and/or vasculogenesis"Weinstein Cardiovasc Meeting. 80 (2002)