Research Abstract |
平成12年度は,対象となる予定の新潟県北魚沼郡守門村が,自治体の都合により協力を辞退した。このため新潟県内の豪雪・過疎地の中で老人自殺率が高い地域から新たに対象を選定し,いくつかの自治体に研究の協力を申し出たところ,中頚城郡中郷村の協力が得られることになった。中郷村は平成12年7月1日の老人(60歳以上)の人口は1684人である。平成元年から平成11年の全自殺者数は31名,その内60歳以上の自殺者数は23名(71.9%)である。11年間の老人(60歳以上)自殺率は124.2人(人口10万対)人であり,平成11年の全国および新潟県における65歳以上の自殺率がそれぞれ39.4,66.4(人口10万対)と比較して,老人自殺率が高い地域である。まず村の行政に働きかけ"中郷村こころの健康づくり推進協議会"を設置した。これは村の開業医,民生委員協議会会長および副会長,老人クラブ連合会長,社会福祉協議会副会長,上越保健所職員,上越地域福祉センター職員,村の行政職員(課長,参事,班長,保健婦,福祉担当,在宅介護センター職員),および研究代表者である新潟大学医学部精神医学教室の高橋邦明医師から構成される。この協議会において中郷村の老人自殺予防活動について協議し,計画を立て,実行した。具体的には,対象者である60歳以上の村民全員に対し,新潟大学方式自己記入式うつ病尺度(Self-rating Depression Scale;SDS)を配布し,協議会のメンバーが研究の目的を説明し,同意を得たSDSを回収した。対象者は1684名であったが,同意を得られた1623名に配布し,1511名の回答を得た。回収率は93.1%であった。1511人のSDSは研究代表者らによって集計,分析され(Max98,Min28,Average49.0,STD9.5),うつ病の可能性があるSDS得点60点以上の老人216名(14.3%)全員を精神科医師が診察し,研究用診断基準(Research Diagnostic Criteria)を用いて診断される。現在184名の診断面接が成されたが,自宅を訪問して診断する必要のある対象者があり,まだ32名の訪問診察が残っているので,RDC診断によるうつ病の有病率は次年度の報告となる。
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