2002 Fiscal Year Annual Research Report
PPAR-r核内受容体分子を標的にした新しい膵癌治療
Project/Area Number |
12671213
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
太田 哲生 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (40194170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萱原 正都 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (60224705)
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Keywords | PPAR-γ核内受容体 / thiazolidinedione(TZD) / 膵癌 / 分化誘導療法 / Gl growth arrest / p21Waf-1蛋白 / E-cadherin蛋白 / tumor dormancy therapy |
Research Abstract |
PPAR-γは、retinoid X receptor (RXR)と二量体を形成し、それぞれのリガンド結合に依存してPPAR応答性部位と呼ばれる特異的なDNA塩基配列に選択的に結合して転写を制御する核内受容体である。我々はこれまでに、1)消化器癌のなかでも膵癌や大腸癌では高率にPPAR-γ蛋白が過剰に発現していること、2)PPAR-γの特異的リガンドであるthiazolidinedione (TZD)処理によりcell cycle調節因子であるp21Waf-1蛋白が強く誘導され、cytostatic(G1 arrest)に癌細胞の増殖が抑制されること、3)TZD処理でE-cadherinの細胞膜での発現増強(分化誘導)に伴って、細胞質内のtyrosine phosphorylationを受けたβ-catenin(蛋白量には変化なし)が減少し、β-cateninの局在が細胞質から細胞膜(細胞骨格系蛋白)へとtranslocationすること、さらに4)癌細胞間の接着能亢進により、in vitro(マトリゲルinvasion assay)での運動・浸潤能が低下することを報告してきた。最終年度である今年度は、TZDの転移抑制効果についてin vivoの実験を行い、本研究の総括をおこなった。実験には、PPAR-γ強陽性BxPC-3膵癌細胞株およびHT29大腸癌細胞株を使用し、転移実験モデルは教室で確立した方法(ヌードマウスの直腸粘膜下にそれぞれの癌細胞を移植し、6週後に屠殺して各臓器やリンパ節内でのヒト由来β-globin DNAをプライマーとしてReal time PCR法で増幅し、癌転移を高感度かつ定量的に評価する方法)を用いて詳細に検討した。その結果、両細胞株において、いずれもTZD治療群での直腸原発巣の腫瘍重量は有意に少なく、リンパ節転移や肺転移は完全に抑制された。[まとめ]以上の成績より、PPAR-γ核内受容体を標的にしたTZDによる癌治療は、PPAR-γ蛋白過剰発現膵癌細胞や大腸癌細胞に対して、癌細胞の分化を誘導すると共に、その増殖をcytostaticに抑制し、効率よくmetastatic phenotypeを減弱させることから、tumor dormancyを誘導する有用な治療法であると思われた。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Tetsuo Ohta et al.: "Thiazolidinedione, a peroxisome proliferator-activated receptor-γ ligand, modulates the E-cadherin/β-catenin system in a pancreatic cancer cell"Int J Oncol. 21. 37-42 (2002)