2002 Fiscal Year Annual Research Report
放射線照射による冠動脈バイパス術後の吻合部狭窄の予防効果に関する実験的研究
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12671292
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井口 篤志 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90222851)
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Keywords | 冠動脈バイパス術 / 吻合部狭窄 / 低容量放射線照射 / 新生内膜形成の抑制 / 瘢痕狭窄 / 再内皮化の遅延 / 血栓形成 |
Research Abstract |
ビーグル犬の大腿動脈、大腿静脈を摘出し、8-0 monofilament糸の連続吻合で、動脈-動脈、動脈静脈のcombosite graftを作成した。これにX線を外照射し、大体動脈に移植した。X線の線量は10Gy、20Gy、30Gyとし、X線照射を行わない群を対照群とした。実験犬は2週間後に犠牲死させ、検索を行った。移植した自己の大腿動脈の新生内膜の増生による狭窄の程度を定量的に測定した。新生内膜の厚さ/血管の径、内腔の断面積/全血管の断面積は、大腿動脈に照射したX線の線量が10Gy以上の場合に対照群と比較して有意な差が認められた。新生内膜の厚さ/血管の径は対照群では0.61±0.04であったのに対し、10Gy以上の照射を行った群ではいづれも0.01以下であった(p<0.0001)。また、内腔の断面積/全血管の断面積は、対照群では0.27±0.02であったが、10Gy照射を行った群では0.66±0.07、20Gy照射を行った群では0.61±0.04、30Gy照射を行った群では0.64±0.01であり、対照群に比して有意に内腔の断面積が広かった(p<0.0001)。移植した自己大腿静脈は新生内膜の厚さ/血管の径は、X線の線量が10Gy以上の場合に対照群と比較して有意な差が認められ、内腔の断面積/全血管の断面積は、20Gy以上の場合に対照群と比較して有意な差があった。免疫染色では、照射群の血管外膜側のalpha-actin、PCNA陽性細胞の減少、新生内膜基底側でのMCP-1、AM-3K陽性細胞の配列があり、新生血管内膜形成に血管外膜細胞の平滑筋繊維芽細胞への形質転換、新生内膜のMCP-1産生が関与していると考えられた。Von Willebrand、eNOSによる染色では照射群における再内皮化が遅れており、抗凝血療法が不十分な例では血栓形成があった。充分な抗凝血療法と併用した低容量照射線は、吻合部狭窄を抑制する治療法として有効であった。
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Research Products
(1 results)