2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12672193
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
上村 隆元 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10232795)
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Keywords | EBM / 産業保健 / 医療経済 / 費用便益分析 / THP |
Research Abstract |
[目的]産業保健施策の効果を、医療経済的側面、QOLの側面、健康効用値増加など様々な角度から評価することにより、どのようにブログラムを行えば効率的であるかを判断できるEvidence(根拠)を求める。 [対照及び方法]昨年度は都内に本社を持つ2つの大企業を対象に自己回答式質問票(HU13:Health Utilities Index3)により、健康効用値の測定を行い更に産業保健にかける両社の費用を調査した。産業保健費用や職種、勤務形態などを説明変数にして健康効用値を目的変数とした重回帰分析の結果、産業保健費用と、勤務形態、職種などは有意に影響する要素であることが示された。今年度はTHP(Total Health Promotion)活動を実行している企業において10年間の経年的な健康事象の変化が加齢変化を押えることができるのか、あるいはTHPの浸透度が健康事象に差を生じるのかどうかの実証研究を中心とする調査を行った。調査対象企業は製造業を中心とする企業の54事業所勤務の10万人の健診データを用いた。このうち10年間、毎年健診を受けている群が6287名あり、これらを対象に解析を行った。このケースでは経済分折においてTHPにかける1人当たりの費用は均一であるため、費用便益分析においては結果(Outcome)のみの比較でいいと考えられた。Outcomeは、1人あたり年間医療費(通院および入院)、年間受療日数、拡張期血圧、収縮期血圧、脂質系、肝機能系、末消血系指標である。5歳年齢階級別コホートを作成して健康事象の変化を検討した。事業所規模を、100人未満、100人以上200人未満、200人以上300人未満、300人以上400人未満、400人以上の5群に分けて、規模の小さい事業所ほどTHPの浸透度が高いと考えられるため、THP活動浸透度の指標とした。[結果および考察]調査対象企業は製造業種で事業所によって業務内容は異なるが事務系2割、製造現場作業系8割であった。THP開始時平均年齢は38.6±8.4歳であった。結果は以下のとおりであった。 経年的医療費の低減がみられる。年齢階扱別にみると、高齢者群での検査値が対照詳に比し良好である。年齢階級別にみると、高齢者群での医療費・年間受診日数が少ない。THP受益群の検査値データが、通常の加齢変化を免れる従来の健康活動実施期間中は有所見者数、医療費ともに増加しつづけているがTHP開始3年後に正常者は減少傾向になる。THP開始3年後から所見ありの増加傾向に抑制がかかる。THP開始3年後から若干の増加傾向があるが以降抑制がかかる。以上。本研究はコントロールのとり方が難しい。THPを施行していない同種の企業をコントロールにとる方法もが一番的確であるが、マッチングの条件が難しく、同様のデータを取ることが難しいと思量される。しかしながら昨年度成果と本年度成果を合わせ、産業保健活動が健康事象に及ぼすPositiveな効果を記述的に示せた意義は大きなものがあると考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 上村隆元: "産業保健の費用と便益第二報"産業衛生学雑誌. 40-1. 252 (1998)
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[Publications] 上村隆元: "産業保健の費用と便益第二報"産業衛生学雑誌. 41-1. D315 (1999)
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[Publications] 上村隆元: "産業保健の費用と便益第三報"産業衛生学雑誌. 42-1. 583 (2000)
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[Publications] 上村隆元: "HUI3を用いた職域における健康効用値測定の試み"産業衛生学雑誌. 43-1. 249 (2001)