Research Abstract |
衣服のフィット感の個人差を明らかにすることを目的として,女子学生70名を対象として衣服のゆとり量を測定した.数種のサイズの衣服のなかからもっともフィットすると判定された衣服のバストの仕上げ寸法と判定者のバスト寸法の違い(ゆとり量)を服種別に測定した.色,柄,形態,生地などがまったく同じでサイズのみが異なる上衣(ブラウス4サイズ,セーター5サイズ,プルオーバー4サイズ,トレーナー4サイズ,ポロシャツ9サイズ)を実験試料として用い,これらの上衣の各サイズを各判定者が試着し,もっともフィット感を得るサイズの衣服を選定した.各上衣を試着,判定後,その判定者のバスト寸法(比較的薄い下着のTシャツ等を着た状態)を測定し,各上衣に対して各判定者別にゆとり量を算出した. その結果,ブラウスについてはゆとり量の平均値は7.3cm,標準偏差は3.7cm;セーターについては,平均値は-12.2cm,標準偏差は5.7cm;プルオーバーの平均値は2.2cm,標準偏差は5.5cm;トレーナーの平均値は31.4cm,標準偏差は6.4cm;ポロシャツの平均値は8.9cm,標準偏差は8.1cmであった.標準偏差が小さいのはブラウス,大きいのはポロシャツであり,前者については標準とされているゆとり量の範囲が比較的小さく,後者については,その範囲が大きく,フィット感の個人差が表出されていることがわかった. 上記の各上衣のフィット感の判定に当たり,衣服のどの部位(バスト,着丈,袖丈,肩幅)のサイズを重視したかを同時に測定した.その結果,ブラウス,セーター,プルオーバーでは,バストと肩幅,トレーナー,ポロシャツでは着丈,袖丈が特に重視されている.どちらかといえば身体にフィットした状態で着用される前者のグループに属する上衣はバストと肩幅が特に重視され,ルーズな状態で着用されている後者に属する上衣は着丈,袖丈が重視されていることがわかる.これは期待された結果であり,一般的な傾向を確認することができた.上記の結果は,上衣のフィット感を判定するに当たって,重視する部位の順位を各判定者がつけたものの平均的なものである.この平均順位の算出,さらに,その平均順位の統計的な一致度の検定,個人差に焦点を当てた分析が必要である. 以上は,各種の上衣を着用した者によるフィット感の判定結果であるが,他者から見たフィット感も検討する必要があり,これらについては次年度に実施すべく計画している.
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