Research Abstract |
平成14年度は,本研究の第3年度にあたった。研究実績は下記の通りであった。 1,世田谷生活時間調査の基礎集計部分と,方法論的特徴を社会調査論に照らして理論化し,平成13年の日本家政学会報告に加筆した「東京都世田谷区在住雇用労働者夫妻の生活時間-2000年調査-調査方法および主な結果の考察」を,研究協力者水野谷武志をファーストオーサーにして『日本家政学会誌』に投稿中であったが,VoL53,No.9(2002.9)に掲載された。 2,引き続き,(1)1995年・2000年の2回を継続して調査に協力した夫妻の生活時間の共有部分を分析し,(2)2000年調査の付帯アンケート部分の定年退職者調査の分析を行い,日本家政学会第54回大会(2002年6月2日)に,2本の報告を行った。前者は,粕谷美砂子,齊藤ゆか、伊藤純、水野谷武志、天野寛子、伊藤セツが「東京都世田谷区在住雇用労働者夫妻の生活時間変化の事例研究-1995年・2000年調査から-」と題して,後者は,齊藤ゆか、伊藤セツが「都市雇用労働者夫妻の定年後の生活-生涯生活時間への展望」と題して報告した。この2本は現在論文執筆中である。 3,研究協力者者水野谷武志は,法政大学経済学研究科に提出する学位申請論文に,本調査の調査論を理論化して組み込み,2003年3月に博士(経済学)を授与された。タイトルは,「雇用労働者における労働時間と生活時間の統計的研究」で,第1章:先行統計研究の概観,本論文の研究視角および構成と内容,第2章:日本の労働時間における概要,第3章:労働時間の国際比較,第4章:不払残業時間の国際比較,第5章:雇用労働者夫妻における生活時間の国際比較,第6章:東京都世田谷区生活時間調査による雇用労働者夫妻の生活時間分析,終章:雇用労働者における労働時間と生活時間の関連,および今後の研究課題,という構成であり,第5章・第6章に,本研究内容が組み込まれた。 4,戸外の生活と戸内の生活に注目し,生活時間と場所の分析を行い,日本家政学会第55回大会に,瀬沼頼子,粕谷美砂子,天野寛子,伊藤セツが「2000年東京都世田谷区在住雇用労働者夫妻の戸内・戸外別の生活時間」と題し,アンペイドワークの測定のために新たなをペイエクイティ手法の応用して開発し,天野晴子,伊藤純,斎藤悦子,松葉口玲子が,「評価ファクターを用いたアンペイド・ワークの社会的評価の可能性」と題するアブストラクトを提出した。 5,『新版日本家政学事典』の「生活時間」の全14項目中,7項目を,当科学研究費のメンバー,天野晴子,天野寛子,粕谷美砂子,水野谷武志,が担当して,本研究の成果を加えて執筆した。 6,上記5を準備する過程で,ESCAP地域の生活時間調査の実施状況を調べ、東アジアの生活時間調査に加え、アジア・太平洋地域の生活時間を比較検討する準備を行った。 7,斎藤悦子が地域通貨にかんする付帯アンケートをまとめて論文執筆中である。 8,上記の生活時間に関連する研究が、生活福祉、ジェンダー平等、アンペイドワークの評価や、介護における家事援助報酬の科学的根拠に連なって、政策定言的意味をもつようまとめる準備が進められている。
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