Research Abstract |
本年度では,(1)日本沿岸部(北海道から九州までの内湾10箇所)海底堆積物中のランタノイド(Ln)元素やトリウム(Th),ウラン(U)を放射化分析法により定量し,各地ごとのLn元素パターンや元素間の比較を行ない,現時点での海洋環境科学的考察を試みた。また,(2)東京湾海底堆積物(2地点)に^<210>Pb堆積年代測定法を適用し,同時に求めた^<137>Cs堆積年代値と比較しながら,各地点での堆積状況の考察を試みた。 その結果,(1)については,(1)噴火湾,陸奥湾,仙台湾の沿岸部海底堆積物試料のランタノイド元素パターンは,他の地域の堆積物や河川堆積物のパターンと比べて,軽ランタノイドに濃縮している負の傾きが明らかに小さかった。(2)噴火湾,陸奥湾,仙台湾,広島湾及び伊勢湾の海底堆積物はLa-Ce間において,明瞭な正のアノマリーを示した。(3)特に噴火湾,次いで陸奥湾,仙台湾では,堆積過程において生物起源粒子の影響を強く受けているものと思われる。(4)Ce/U並びにTh/U比は,深度とともにそれらの比が小さくなった。このことより,海水中は酸化環境であっても,堆積物中では還元環境に変化しているものと考えられる。また,(2)については,(1)過剰^<210>Pb放射能濃度の深度分布から,平均堆積速度は東京湾I(35°34.4'N,139°55.3'E,16m)では,1.10(0.605-1.56)cm/y,東京湾II(35°09.2'N,139°45.3'E,455m)では,0.823(0.645-1.54)cm/yとなった。(2)試料全体での混合が示唆された東京湾IIについて部分的な堆積速度を求めた結果,0.292-0.598cm/yとなった。このような試料については,部分的回帰直線から堆積速度を求める方法が適していると考えられる。(3)東京湾Iについて,^<137>Cs法から求めた平均堆積速度は1.10-1.13cm/yと算出され,^<210>Pb法による値(1.10cm/y)とよく一致した。
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