Research Abstract |
本年度では,日本沿岸部のうち,地域による特色の出やすかった東日本沿岸部(噴火湾,陸奥湾,東京湾II(内湾部)・東京湾IV(湾口部))並びに太平洋(IAEA提供)海底堆積物コア試料中のランタノイド元素(Ln)やトリウム(Th)・ウラン(U)等を中性子放射化分析法により定量し,主に海底堆積物の堆積環境について考察した。 その結果,1.太平洋試料は,他の沿岸部堆積物に比べてMnの濃度が大きな値(数倍〜1桁)を示し,太平洋堆積物においては,海水からの寄与の割合が大きいことが示唆された。2.噴火湾の第5層から第7層(深度8〜14cm)が表層に存在した時期に何らかのイベントがあった可能性が示唆された。また,第5層から第7層以降のMnとFeの挙動が一致した。3.噴火湾堆積物試料のLnパターンは,東京湾II,東京湾IV,陸奥湾及び太平洋堆積物のパターンと比べて,軽Lnに濃縮している負の傾きが小さく,河川等からの直接的な影響は比較的弱いと考えられる。4.噴火湾及び東京湾IVの海底堆積物はLnパターンのLa-Ce間において,正の傾きを示すことがあり,上述と同様,河川等からの直接的な影響は比較的弱いと考えられる。5.日本沿岸部試料において,Uの深度分布は,表層から10cm位まで濃度の変動があることを明瞭に示した。また,Th及びC6は互いに対応する分布を示すのに対し,Uはその両元素と対称的な分布を示した。それに対し,太平洋試料は濃度変動が殆ど見られなかった。6.東京湾II,噴火湾・太平洋試料におけるCe/U比並びにTh/U比は,ほぼ深度とともにそれらの比が小さくなった。それに対し,東京湾IV・陸奥湾におけるCe/U比並びにTh/U比は,深度との対応が規則的には見られなかった。このことより,海水中が酸化環境で,堆積物中では還元環境に変化する環境と,堆積物の深度によっては,酸化環境の傾向が強い環境の2通りあるのではないかと考えられる。
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