2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12CE2002
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
御厨 貴 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (00092338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯尾 潤 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90241926)
青木 保 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (80062636)
伊藤 隆 政策研究大学院大学, 政策情報研究センター, 教授 (30011323)
竹中 治堅 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (70313484)
佐道 明広 政策研究大学院大学, 政策研究プロジェクトセンター, 助教授 (10303091)
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Keywords | オーラルヒストリー / オーラル・メソッド / 政策決定過程 / インスティテューション・メモリーズ / インタヴュー |
Research Abstract |
今年度は本ブロジェクトがスタートして3年目であり、過去2年間に確立した研究方法に沿って、オーラルヒストリーのインタヴュー・データの集積を続けるとともに、国際シンボジウムを開催し、英米のこの分野における先行研究活動についての情報や方法論の面でのノウハウを吸収することが出来た。 オーラルヒストリーのインタヴュー・データの集積については、昨年度からの継続25名、今年度新たに開始した51名のインタヴュー対象者に対し、延べ267回のインタヴューを実施した。既にインタヴューを終了した人物を含めると、ブロジェクトの開始以来、全部で148人に対してインタヴューを行ってきていることになる。今年度行ったインタヴュー対象者の背景も元内閣官房長官、参議院議員、外務、旧通産、旧運輸、行政管理庁、自治、防衛などの官僚OB、元自衛隊幹部、企業人、労組指導者、ジヤーナリストなど多岐に及ぶ。これにより、これまでに行ったインタヴュー対象者の職責や帰属組織におけるサンブル数を増やすことができ、当初の目的のひとつでもあった様々な職責や組織文化を研究するために不可欠なデータの量的充実をはかることが出来た。また、若手企業家や米国特派員経験者のオーラルなど、新たなジャンルの人物を対象としたオーラルも始めており、対象領域も拡大した。さらに、石炭政策、国鉄民営化のブロセスなど特定の政策テーマを対象としてとりあげ、大学院学生が聞き手として参加するという形で、研究指導の一環としてオーラルヒストリーを取り入れながら、政策データの集積も図るという新たなアブローチも試みた。 インタヴュー成果の作成については、これまでに終了したインタヴューの一部について、引き続き冊子化作業を進め、今年度新たに作成した9冊も含め、これまでに19冊の冊子を作成した。また、インタヴューに基づいた2冊の書物が、やはり今年度に市販されている。 オーラルヒストリーの方法に関しては、従来から行ってきた方法論研究会を継続し、社会学者、ノンフイクション作家、映像ドキュメンタリー作家など様々なジャンルの研究者、専門家を招いて5回の研究会を開催した。それぞれの分野でのオーラルヒストリーの経験、活用の事例などを踏まえて、オーラルヒストリーという方法がもつ可能性について、多角的な検討を行い、理解を深めることが出来た。また、これまで行ったインタヴューについて、インタヴュー記録をどう読み解くか、といった視点からの分析と議論を目的としたオーラルヒストリーのコンメンタール懇話会も発足させ、都合7回開催した。 昨年の11月8、9の両日、東京において「21世紀のオーラルヒストリー」と題した国際シンポジウムを主催した。英・米等から8名の研究者、専門家が参加し、本学のブロジェクト関係者6名を含め、日本からも合計12名が参加した。パネリストを含め、2日間で、延べ約360名が参加し、全国紙、地方紙を含め、多くの新聞により取り上げられたことにも示されるように、わが国における、オーラルヒストリーの啓蒙、普及という面でも成果をあげたといえる。 シンポジウムは4つの講演、4つのパネルから構成され、それぞれの国におけるオーラルヒストリーの経験、現状、課題などを巡って極めて興味深い議論が展開された。とりわけ政治、公共政策の分野でオーラルヒストリーを行うことの意義や課題がそれぞれの実例に基づいて紹介され、共通の課題が浮き彫りになるとともに、オーラルヒストリーを取り巻く文化とでもいうべきものの各国の相異についても認識を深めることが出来た。さらに、日英米のオーラルヒストリーの歴史的発展や現状の比較を通じて、記録の公開、利用、ブロジェクトのための資金調達の方法から記録を保存するための媒体など、オーラルヒストリーのインフラストラクチャーに関して、英米の経験から貴重な情報を得ることが出来た。 一連の討論によって、今後わが国においてオーラルヒストリーの基盤作りとして取り組むべき課題が明らかになったことは極めて有益であったといえる。英米の参加者も、シンポジウムのテーマの意義と有効性を高く評価しており、今後も積極的に交流を図っていきたいとの強い関心が示され、オーラルヒストリーの国際的研究ネットワークに参加していく足がかりを築くことができたのも成果の一つといえよう。
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Research Products
(24 results)
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[Publications] 伊藤 隆: "昭和史の史料を探る"青史出版. 232 (2000)
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[Publications] 手島冷志: "外交官オーラルヒストリー-手島冷志-"政策研究大学院大学. 304 (2000)
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[Publications] 竹下 登: "政治とは何か-竹下登回顧録-"講談社. 350 (2001)
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[Publications] 田川誠一: "田川誠一オーラルヒストリー(上・下)"政策研究大学院大学. 524 (2001)
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[Publications] 海原 治: "海原治オーラルヒストリー(上・下)"政策研究大学院大学. 746 (2001)
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[Publications] 御厨 貴 他: "オーラルヒストリーの課題と実践-過去と未来との対話-"政策研究大学院大学. 87 (2001)
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[Publications] 竹内 良夫: "竹内良夫オーラルヒストリー"政策研究大学院大学. 297 (2001)
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[Publications] 御厨 貴 他: "学としてのオーラルヒストリー-民俗学から政策研究まで-"政策研究大学院大学. 86 (2002)
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[Publications] 佐道明広 他: "「捕鯨問題」と日本外交(オーラルヒストリー)-保護と利用を巡る国際対立の構造"政策研究大学院大学. 218 (2002)
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[Publications] 下河辺 淳: "「阪神・淡路復興委員会」下河辺 淳「同時進行」オーラルヒストリー(上・下)"政策研究大学院大学. 422 (2002)
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[Publications] 御厨 貴 他: "「オーラルヒストリー方法論研究会」報告 Vol.1佐藤健二-コミュニケーションとしての調査-"政策研究大学院大学. 34 (2002)
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[Publications] 御厨 貴: "オーラル・ヒストリー-現代史のための口述記録"中央公論新社. 207 (2002)
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[Publications] 椎名敏夫: "椎名敏夫オーラルヒストリー"政策研究大学院大学. 152 (2002)
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[Publications] 竹本孫一: "竹本孫一オーラルヒストリー"政策研究大学院大学. 181 (2002)
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[Publications] 御厨 貴 他: "「オーラルヒストリー方法論研究会」報告 Vol.2丹羽清隆-オーラルヒストリーとテープ起こし-"政策研究大学院大学. 28 (2002)
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[Publications] 守屋廉造: "守屋廉造オーラルヒストリー"政策研究大学院大学. 135 (2002)
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[Publications] 内田星美: "内田星美オーラルヒストリー"政策研究大学院大学. 237 (2002)
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[Publications] 太田勇三郎: "太田勇三郎オーラルヒストリー"政策研究大学院大学. 121 (2002)
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[Publications] 天城勲: "天城勲オーラルヒストリー(上・下)"政策研究大学院大学. 534 (2002)
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[Publications] 奥野誠亮: "派に頼らず、義を忘れず-奥野誠亮回顧録"PHP研究所. 477 (2002)
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[Publications] 天池清次: "労働運動の証言"(財)日本労働会館. 546 (2002)
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[Publications] 木田宏: "木田宏オーラルヒストリー(上・下)"政策研究大学院大学. 702 (2003)
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[Publications] 御厨 貴 他: "石炭政策オーラルヒストリー"政策研究大学院大学. 386 (2003)
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[Publications] 御厨 貴 他: "国際シンポジウム21世紀のオーラルヒストリー-政策研究の視点から-"政策研究大学院大学. 145 (2003)