2004 Fiscal Year Annual Research Report
量子スピン系の磁場誘起現象とフラストレーションの効果
Project/Area Number |
13130201
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 寛 東京大学, 物性研究所, 教授 (20127054)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 和夫 東京大学, 物性研究所, 教授 (70114395)
瀧川 仁 東京大学, 物性研究所, 教授 (10179575)
加倉井 和久 日本原子力研究所, 先端基礎センター, 主任研究員 (00204339)
|
Keywords | フラストレーション / 磁性 / 低次元量子スピン系 / 磁気秩序 / 軌道秩序 / 量子相転移 |
Research Abstract |
物質開発研究では、S=2ハルデン候補物質の1次元磁性体FePb_4Sb_6S_<14>、3次元フラストレート系物質HgCr_2O_4、新規ペロフスカイトMn酸化物Pr_<0.5>Ba_<0.5>MnO_3,Sm_<1-x>La_xBa_<1-x>La_xMn_2O_6などを新たに開発した。Pr_<0.5>Ba_<0.5>MnO_3では低温で新奇な巨大磁気抵抗効果を観測した。また、Sm_<1-x>La_xBa_<1-x>La_xMn_2O_6では酸化物では初めての室温での200%以上の巨大磁気抵抗効果の実現に成功した。強磁場測定では、HgCr_2O_4において2段階の磁化プラトーを観測し、完全な磁気相図を得た。同じく幾何学的フラストレーション系物質CdCr_2O_4にいて磁場誘起1次相転移と1次相転移に伴う大きな体積変化を観測した。核磁気共鳴研究では、NH_4CuCl_3が示す1/4および3/4磁化プラトー状態の磁気構造を解明するために、^<14>N核のNMR測定を行い、160Kと70Kにおいて2段階の構造相転移があり、8種類の異なるNサイトが生じることを見い出すとともに、Cuスピンがダイマーを組む新しい磁気構造を提唱した。またスピン1のボンド交代鎖NTENPにおいて構造上のランダムネスに起因する不均一な磁場誘起交替磁化が発生することを見出し、磁場中相転移に対し新規なランダム磁場効果を与えることを解明した。中性子散乱研究では、スピン・トライマー系A_3Cu_3(PO_4)_4(A=Ca,Sr,Pb)のスピンダイナミックスを非弾性中性子散乱により明らかにした。また、原研改3号炉に設置された3次元偏極中性子解析装置を使ってスピン・フラストレーション系スピネル化合物CdCr_2O_4における楕円螺旋磁気構造を検証した。理論的には、UGe_2における高圧下においての強磁性状態と超伝導の共存という新しい現象に対し、ウラニウムのf電子の軌道縮退を考慮したモデルを構築し、超伝導発現の前提となる、強磁性相間の一次相転移が実際に可能であることを示した。
|