2003 Fiscal Year Annual Research Report
電弱対称性の破れのダイナミクスと、その宇宙論への応用
Project/Area Number |
13135207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 太彦 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (70108447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諸井 健夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60322997)
棚橋 誠治 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (00270398)
久野 純治 東京大学, 宇宙線研究所, 助教授 (60300670)
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Keywords | 超対称性 / バリオン数生成 / 初期宇宙 / 電弱対称性の破れ / 暗黒物質 / 宇宙の背景輻射 |
Research Abstract |
吉村は、一次相転移による電弱バリオン生成の新たな機構を求め、宇宙の熱環境中での一次相転移のダイナミクスを解明すべく、熱環境中でのトンネル効果現象の時間発展の研究を行った。特に、環境との摩擦による非線形効果によりトンネル効果が飛躍的に増大することがあることがあることを示した。この効果は線形近似ではパラメータ共鳴に対応する。 久野は、超対称標準模型の予言する暗黒物質の探索の理論的研究を行った。暗黒物質の探索には、原子核と暗黒物質との弾性散乱による直接探索と、宇宙における暗黒物質の対消滅現象起源の異常宇宙線探索がある。暗黒物質の性質は超対称性の破れに依存し、ある種の模型は暗黒物質が電弱電荷を持つことを予言する。この場合暗黒物質探索において量子効果が重要であることを示した。特にTEVスケールの質量を持つ暗黒物質の場合、共鳴効果により爆発的に対消滅現象が増大することがある。また、原子核との弾性散乱の断面積に対しても有意な補正を生む場合がある。 高次元空間のコンパクト化のスケールがTEVスケールにある可能性は今日標準模型を超える理論として注目されている。棚橋は、高次元理論におけるトップクォーク凝縮によるダイナミカルな自発的対称性の破れの研究を行った。標準模型に存在するゲージボゾン、クォークが存在する場合、高エネルギーで急激にゲージ相互作用が強くなる。最大引力チャンネル(MAC)解析によりこの状況下でのトップ凝縮を解析し、トップクォークとヒッグス粒子の質量に対し予言をつけた。 WMAP衛星により宇宙の背景輻射の揺らぎが非常に精密に測定された。WMAPの測定において宇宙の大きさ程度の揺らぎが小さいことが判明したが、諸井は、その解釈としてダークエネルギーの候補であるクィッテンセンスがアイソカーバチャー揺らぎを持つ場合にはその揺らぎの大きさを自然に説明できることを示した。 宇宙の背景輻射の揺らぎの起源としてインフレーションが有力な候補であるが、その一方でインフラトン以外のスカラー場がインフレーション後に宇宙のエネルギー密度を支配し、今日観測された密度揺らぎの種を作った可能性がある。諸井は超対称模型においてその可能性を調べた。 重力子の超対称粒子であるグラビティーノは宇宙の再加熱期に生成される可能性がある。この粒子は不安定であっても超寿命で、もし元素合成期以降に崩壊する場合元素合成の予言を変更しえる。諸井はグラビティーノがハドロンに崩壊する場合、その質量と宇宙の再加熱温度に対し強い制限があることを示した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] J.Hisano, S.Matsumoto, M.M.Nojiri: "Explosive dark matter annihilation."Phys.Rev.Lett.. 92. 031303 (2004)
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[Publications] M.Harada, M.Tanabashi, K.Yamawaki: "Pi+ pi0 mass difference in the hidden local symmetry : A dynamical origin oflittle Higgs"Phys.Lett.. B568. 103 (2003)
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[Publications] K.Hamaguchi, M.Kawasaki, T.Moroi, F.Takahashi: "Curvatons in supersymmetric models"Phys.Rev.. D69. 063504 (2004)
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[Publications] T.Moroi, T.Takahashi: "Correlated isocurvature fluctuation in quintessence and suppressed CMB anisotropies at low multipoles"Phys.Rev.Lett.. 92. 091301 (2004)
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[Publications] J.Hisano, Y.Shimizu: "B to Phi K(S) versus electric dipole moment of Hg-199 atom in supersymmetric models with right-handed squark mixing"Phys.Lett.. B581. 224 (2004)
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[Publications] J.Hisano, K.Kawagoe, M.M.Nojiri: "A detailed study of the gluino decay into the third generation squarks at the CERN LHC"Phys.Rev.. D68. 035007 (2003)