2001 Fiscal Year Annual Research Report
スハルト政権崩壊後のインドネシア地方社会に関する文化人類学的研究
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13371009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉島 敬志 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (80196724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 敏 大阪大学, 大学院・人間科学研究科, 教授 (60175487)
阿部 健一 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 助教授 (80222644)
中村 潔 新潟大学, 人文学部, 教授 (60217841)
水野 廣祐 京都大学, 東南アジア研究センター, 助教授 (30283659)
鏡味 治也 金沢大学, 文学部, 助教授 (20224339)
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Keywords | 地方自治 / アイデンティティ構築 / 文化 / アダットの再活性化 / 民族集団の政治化 / 地方社会の財力・資源 / マスメディアの伸張 / スハルト政権期のハビトゥス / 中央と地方の二元論 |
Research Abstract |
研究代表者と研究分担者の9名全員が2001年8月から2002年1月にかけての時期にインドネシアの地方社会で1ヶ月から4ヶ月間フィールドワークをおこなった。この調査をとおして明らかになったことのいくつかを以下に列挙する。ほぼ全ての調査地域において伝統文化/アダット(慣習法)にもとづく発言が力をえており、それを地方自治や地方政治と関連づけたり、反映させようとする様々な動きがみられる。これは伝統文化/アダットを共有するとみなされる民族集団の政治化であり、地方的アイデンティティの構築と表裏一体の関係にある。こうした動きが分離主義的な傾向をもつかどうかは、スハルト政権期における中央政府との関係や地方社会の財力や資源といった多様な要因と密接なかかわりをもっているが、いずれにしても一般的にいえることは地方分権なるものが中央と地方を対比させる二元論的な言説のなかで議論される場合が多いということである。また、地方社会の動向に大きな影響をおよぼしつつある新たな現象としてはマスメディアの発音力の著しい伸張があげられる。そのために、マスメディア、とりわけ地方紙が地方政治の実際上の舞台となる現象も方々の地方社会で観察されるようになってきた。だが、インドネシアの地方社会ではスハルト政権時代に培われたハビトゥスが現在においても作用しており、持続可能な開発や公共の利益がかならずしも政治・政策理念とされていないために、環境破壊や汚職が持続するという構造が観察される。こうしたハビトゥスと地方自治の時代における新たな諸現象とのせめぎあい、もつれあいが今日のインドネシア地方社会を大きく特徴づけている。
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