2001 Fiscal Year Annual Research Report
アラル海流域における大規模灌漑農業の生態環境と社会生態におよぼす影響
Project/Area Number |
13375010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石田 紀郎 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (80026434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠美 順理 中京大学, 教養部, 講師 (10319220)
若井 晋 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30158571)
千葉 百子 順天堂大学, 医学部, 助教授 (80095819)
夏原 由博 大阪府立大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20270762)
下田 妙子 九州女子大学, 家政学部, 教授 (20106280)
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Keywords | 中央アジア / アラル海 / 疫病 / 飲料水 / 塩分 / 気象変化 / 潅漑農業 / 環境保全 |
Research Abstract |
世界第4位の湖面積を有していたアラル海(中央アジアのカザフスタンとウズベキスタン共和国領有)は1960年代からの流入水の激減によって、その湖面積が3分の1となった。流入水の減少の原因は流入河川流域における大規模灌漑農地の開拓による農業用水の過度の取水である。湖面積の減少による新たな沙漠の出現、流域の水環境の変化は多大な影響を流域住民にもたらしている。この環境変化がいかなる影響を流域住民の生業、生活、社会経済、さらに中央アジアの生態系に及ぼしているのかを明らかにすることが本研究の課題である。対象地域の広大さとその影響の複雑さ、当該関係国の社会経済状況の悪化に伴う研究機関の崩壊など、実態研究は困難な状況下にある。本研究グループは次の3課題を中心として調査活動を展開した。1)アラル海保全への地域住民の意識、2)旧アラル海湖底(沙漠)のリハビリテーション施策立案に向けた植物相と動物相の遷移、3)地域住民(とくに児童)の健康被害と生活環境質の関係についての疫学調査である。 地域住民のアラル海再生・保全への願望には激しいものがあるが、具体的課題の設定や実現行動は極めて乏しく、政府による施策待ちである。新たに出現した沙漠によって地域の気候は変わり、大小の砂嵐が村と農地に被害をもたらしているが、砂嵐防止の植栽などはほとんど実施されず、環境のリハビリテーションの具体策は皆無である。漁業の崩壊によって生計の手段を奪われた旧漁民・漁村は牧畜業への転換によって生計維持を図っているが、経済状態は極めて劣悪である。かかる悪環境下での健康障害は女性と子供に顕著に現れ、低栄養、貧血、呼吸器機能障害が多発している。以上の調査研究は旧アラル海沿岸部のカザリンスク地域で実施した。今後さらにアラル海環境問題の実態解明と対策提案作業を展開する。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 野村政修, 石田紀郎: "アラル海環境問題と中央アジアの安定"ロシア研究. 33. 100-117 (2001)
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[Publications] 石田紀郎: "アラル海環境問題と農業"ロシア東欧貿易調査月報. 7. 67-84 (2001)
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[Publications] 森本幸裕: "衛星画像NOAA/AVHRRを用いたアラル海縮小にともなう旧湖底域の植生変動の定量的解析"ランドスケープ研究. 63. 779-782 (2000)
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[Publications] 森本幸裕: "SPOT衛星データを用いたアラル海旧湖底域およびシルダリアデルタにおける植生変動モニタリング"ランドスケープ研究. 64. 805-810 (2001)
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[Publications] Funakawa, S.: "Salt-affected soils under rice-based irrigation agriculture in southern Kazakhstan"Geoderma. 97(1-2). 61-85 (2000)
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[Publications] 千葉百子: "カザフスタン共和国アラル海周辺地域に住む学童の健康障害調査;その1 血中元素濃度"日本衛生学雑誌. 57(1). 461-461 (2002)
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[Publications] 石田紀郎: "世界の湖"滋賀県琵琶湖研究所編、人文書院. 340 (2001)