2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13410015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 康夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60153623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 哲哉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60171500)
石光 泰夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60093366)
杉橋 陽一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50015278)
中島 隆博 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (20237267)
田中 純 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (10251331)
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Keywords | 潜在性 / 現実性 / ヴァーチャル・リアリティー / 記憶 / 芸術作品 / メディア / ゲーム / 仮想性 |
Research Abstract |
本年度は芸術作品や事例の分析を総合し、報告書を作成した。具体的な成果は次の通り。 1.潜在性と現実性の概念を思想史的に再考し、ヴァーチャル・リアリティーの概念の明確化をはかった。2.人間にとっての現実性を構成する重要な要因である記憶との関係から、歴史的な記憶のメカニズムを分析した。3.美術作品をはじめとする伝統的な視覚表象や美学的考察を、ヴァーチャル・リアリティーという視点から読み直し、主体と対象の関係性の歴史としての「眼差しの歴史」の可能性を検討した。4.コンピュータ・テクノロジーによって可能になった数々の映像表現を取り上げ、ヴァーチャル・リアリティーの概念を軸に、従来の映像表現との差異を分折した。5.ヴァーチャル・リアリティーの表現を支える工学的技術が情報工学の歴史のなかで発展してきた過程をたどることにより、同時代の社会・文化現象との結びつきを探り、その存立が前提とする諸条件を考察した。6.戦争の記憶など、具体的な歴史的・社会的問題を取り上げ、潜在化した記憶が現実化されるメカニズムを分析した。7.さまざまなゲームを一種のヴァーチャル・リアリティーを共有することで展開されるプレイヤーの相互作用ととらえ、そのようなゲーム的相互作用を芸術創造の現場で活用している作品を対象に考察した。8.言語芸術におけるヴァーチャル・リアリティー構築の技法を幅広く検討し、そこにおける仮想現実性の構造を析出した。9.建築をはじめとする造形空間が「ここ」ではない「他所」を連想させる象徴的空間構成を都市空間などを中心に分析した。10.サイバースペースと呼ばれる仮想的な空間経験を、メディア論的身体論を踏まえつつ、思想史的展望のなかで考察した。11.演劇やオペラなどの身体芸術をめぐり、身体を通じて再現=表象=上演される仮想的な世界の構成要件を、能楽や舞踏の運動表現などを中心に分析した。
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[Publications] 小林康夫: "雪舟の方へ--メルロ=ポンティの「両義性」の哲学から"河合隼雄・中沢新一編『あいまいの知』岩波書店. 245-263 (2003)
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[Publications] 小林康夫: "器用な不器用さ--ロラン・バルトの手"ユリイカ. 第35巻17号. 98-102 (2003)
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[Publications] 高橋哲哉: "The Emperor Showa standing at ground zero : on the (re-)configuration of a national "memory" of the Japanese people"Japan Forum. vol.15 no.1. 3-14 (2003)
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[Publications] 高橋哲哉: "国家と犠牲--「靖国」問題をめぐって"哲学. 第54号. 111-128 (2003)
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[Publications] 田中純: "建築と文字--アレゴリー的試論"磯崎新・岡崎乾二郎監修『漢字と建築』INAX出版. 200-217 (2003)
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[Publications] 中島隆博: "「中国哲学史」の系譜学--ジョン・デューイの発生的方法と胡適"中国哲学研究. 第19号. 56-74 (2003)
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[Publications] 小林康夫: "表象の光学"未来社. 317 (2003)