2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13410115
|
Research Institution | OSAKA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
福永 伸哉 大阪大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50189958)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松木 武彦 岡山大学, 文学部, 助教授 (50238995)
北條 芳隆 東海大学, 文学部, 助教授 (10243693)
高橋 照彦 大阪大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (10249906)
清家 章 高知大学, 人文学部, 助教授 (40303995)
杉井 健 熊本大学, 文学部, 助教授 (90263178)
|
Keywords | 前方後円墳 / 横穴式石室 / 首長墓系譜 / 古墳時代 |
Research Abstract |
本年度は計画の最終年度であった。分担研究者が収集した事例に基づいてそれぞれの担当地域の前方後円墳消滅過程についての特質を考察し、相互に比較検討を行った。 その結果、前方後円墳消滅過程については、(1)旧国内をさらにいくつかにわけた小地域レベルで著しく異なること、(2)消滅時期は古墳時代前期から後期までさまざまであるがそのなかで中期前葉(5世紀前葉)、中期後葉(5世紀後葉)、後期中葉〜後葉(6世紀中葉〜後葉)に大きな画期が認められること、(3)後期前葉(6世紀前葉)には長らく途絶えていた前方後円墳築造が一時的に復活する地域があること、などが整理できた。そして、その背景としては中央政権との政治関係の変化、薄葬化へ向かう国際状況、記念物としての性格を強く持つ前方後円墳にたいして社会が与えた意味の変化など複雑な要因を想定しうることが地域からの研究によって示された。また、畿内中央部で6世紀中葉以降に造られる巨大な前方後円墳については、有力氏族と組んで新たな王統の権威付けを伝統的な方式で示そうとする意図を含んだ特殊なものであるという指摘がなされた。 教科書的には前方後円墳消滅が寺院造営・「大化薄葬令」などとの関わりで理解されるが、本研究における整理を通じて、両者の間にはなお時期の隔たりや地域的な偏差が大きく存在することが浮き彫りになった。このことは、前方後円墳がかならずしもすべての地域でおなじ意義をもってわけではないことを示唆しており、近年議論の多い前方後円墳出現の意義についても一視点を提示できる成果である。もっとも、それでも前方後円墳が6世紀末〜7世紀初頭頃には完全に消滅することは事実である。消滅過程の評価については、地域ごとの消滅と全土的な消滅のそれぞれに歴史的意義を見いだす必要がある 以上のような考察および発掘調査成果をまとめた報告書を年度末に作成した。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 福永伸哉: "昼飯大塚古墳築造の時代背景"史跡昼飯大塚古墳(大垣市教育委員会). 485-494 (2003)
-
[Publications] 福永伸哉: "前方後円墳出現の歴史的意義"文化の多様性と比較考古学(考古学研究会). (校正中). (2004)
-
[Publications] 高橋照彦: "古墳時代の墳墓と社会"日本古代史新稿(梓書房). 34-45 (2004)
-
[Publications] 北條芳隆: "墳墓研究の現在-戦後とどう向き合うか-"文化の多様性と比較考古学(考古学研究会). (校正中). (2004)
-
[Publications] 杉井 健: "前方後円墳分布圏とその周辺における生活様式伝播の多様性"文化の多様性と比較考古学(考古学研究会). (校正中). (2004)
-
[Publications] 清家 章: "横穴式石室導入期の階層構造"中・後期古墳の階層秩序(中国四国前方後円墳研究会). 19-24 (2004)