2002 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・ナショナル時代におけるドイツの文化的アイデンティティの諸相
Project/Area Number |
13410136
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
下宮 忠雄 学習院大学, 文学部, 教授 (90101592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 茂 学習院大学, 文学部, 教授 (30080419)
川口 洋 学習院大学, 文学部, 教授 (60080412)
轡田 收 学習院大学, 文学部, 教授 (90051325)
保坂 良子 学習院大学, 文学部, 助教授 (20229165)
大貫 敦子 学習院大学, 文学部, 教授 (70176957)
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Keywords | ポスト・ナショナル / 脱・ドイツ / ヨーロッパ共同体 / ナショナル・アイデンティティの相対化 / 多文化社会 |
Research Abstract |
今年度は、グローバル化や脱・ドイツ的アイデンティティとは表面的には相反するようにみえる個別文化に依拠したアイデンティティの模索に焦点を絞って調査を行った。重点綱目は以下の通りである。 1.ドイツ文化やポジティヴな歴史的連続性に接合したアイデンティティの要求は、1980年代中盤における歴史家論争から顕著になるが、それ以降の90年代にはいってからの「ドイツ論」(たとえばボート・シュトラウスらの『自覚した国民』)はその延長にあるのか、ナショナル・アイデンティティは、過去の解釈パターンの単なる繰り返しであるかについて、ドイツ統一、EU統合などの政治的出来事の時間軸との関連から検証した(轡田、宮下、工藤、木村、鷲巣、大貫、ペーカー、狩野)。 2.グローバル化と並行しながら、それに対抗する地域性への着目がどのような形で発現しているかという点に関して、方言の見直しやマイノリティ言語への着目などの点について検証した(下宮、保阪、川口、ペーカー)。 3.個別地域の文化に依拠した「小さなアイデンティティ」の要求と、ナショナルな次元での「ドイツ国家アイデンティティ」とがどの程度重複しているのか、という点に関して、いわゆる「郷土文学」のジャンルの復興傾向と、ナショナル・アイデンティティの関係を(たとえばマルティン・ヴァルザーの場合など)を検証した(工藤、木村、鷲巣、大貫、ペーカー、狩野)。 4.文化的個別性の主張の発現形態について、ドイツ連邦共和国の事例をオーストリアおよびスイスの場合と比較検討することによって、ドイツの政治文化をより精密に分節化するとともに共時的な軸からの検証を行った(保阪、加藤、ペーカー)。
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Research Products
(17 results)
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[Publications] 川口洋: "親族の転換-Transitivitatの解釈をめぐって-"学習院大学ドイツ文学会研究論集. 7号(未定). (2003)
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[Publications] 大貫敦子: "Rede-Figur und Gender-Figuration -Am Beispiel des Sprachraums in der deutschen Salonkultur"学習院大学文学部『研究年報』. 49号. 171-190 (2003)
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[Publications] 大貫敦子: "「美的ナショナリズム」と人文系知識人の悪弊"岩波口座『近代日本の文化史』. 9巻. 6-8 (2002)
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[Publications] 大貫敦子: "Gender und asthetische Kanonbildung -Wahn der Originalitat und Verdammung der Ordinaritat"Internationales Symposium, Gender-Studien. 19-34 (2002)
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[Publications] 大貫敦子: "Der Kult der weissen Haut"Gender, Nationalstaat und Kultur in der Zeitalter der Globalisierung. 35-49 (2002)
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[Publications] 木村高明: "H.ヘットナーにおける美と政治-文学史記述の転換点-"学習院大学ドイツ文学会研究論集. 7号(未定). (2003)
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[Publications] Thomas Pekar: "Bushido-Diskurs und,Totale Mobilmachung' bei Ernst Junger. Eine fatale interkulturelle Beziehung"Neue Beitrage zur Germanistik. Bd.1. 243-251 (2002)
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[Publications] Thomas Pekar: "Am deutschen Wesen sollten auch die japanischen Frau genesen.,Frauenemanzipation' als Thema in deutschsprachigen Romanen und Reiseberichten uber Japan um 1900"学習院大学文学部『研究年報』. 49号(未定). (2003)
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[Publications] Thomas Pekar: "Entfernte Verwandtschaften : Ernst Junger und Japan"Junger-Studien. Bd.2(未定). (2003)
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[Publications] 加藤耕義: "昔話の主人公-グリムのメルヒェン集と日本昔話の比較の試み-"昔話研究の地平. 117-136 (2002)
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[Publications] 狩野智洋: "『3018地点の蜂起』と『登山鉄道』 エーデン・フォン・ホルヴァートの改作意図"言語・文化・社会. 1号(未定). (2003)
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[Publications] 鷲巣由美子: "ファッション雑誌の描く「新しい女」"ベルリンのモダンガール(田丸理砂 編,三修社). (未定). (2003)
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[Publications] 轡田收: "バロックの花園-理想の景観-"ドイツ誌を学ぶ人のために(内藤道雄 編,世界思想社). 23-39 (2003)
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[Publications] 下宮忠雄: "ドイツ語とその周辺"近代文芸社. 200 (2003)
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[Publications] Thomas Pekar: "Der Japan-Diskurs im westlichen Kulturkontext (1860-1920). Reiseberichte -Literatur -Kunst"Iudicium Verlag Munchen. 531 (2003)
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[Publications] 保阪良子: "ドイツ文法ガイドA-Z"同学社. 59 (2003)
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[Publications] (訳)小澤俊夫, 加藤耕義, 間宮史子: "オットー・ウベローデ-グリム童話全挿絵集-"古今社. 189 (2002)