2002 Fiscal Year Annual Research Report
中国労働市場の変貌とソーシャルセーフティネットの形成
Project/Area Number |
13430005
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
木村 武司 山形大学, 人文学部, 教授 (70007144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
首藤 若菜 山形大学, 人文学部, 講師 (30323158)
高木 郁朗 日本女子大学, 家政学部, 教授 (50107174)
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Keywords | 国際研究社交流 / 中国 / 中国労働市場 / 中国社会保障 / ソーシャルセーフティネット / 改革開放政策 / グローバライゼーション |
Research Abstract |
本研究プロジェクトは、改革開放政策の展開とグローバライゼーションの影響、産業・技術構造の変動のなかで、急速に変化しつつある中国の労働市場の実状と、それに対応する失業雇用政策およびソーシャルセーフティネットの形成とを地域レベルの実態調査において調査することを目的としている。本年度は、中国福建省の厦門市と泉州市を訪ね、各市の労働・社会保障局、市労働組合、港湾業・自動車製造業(厦門市)各1社ずつ、紡績業2社(泉州市)にヒアリング調査をおこなった。泉州市と厦門市は、中国のなかでも早い時期から私営企業の参入がすすんでいる。それは、厦門市については、経済特別区という特殊な事情があるが、泉州市については、今回調査をおこなった2事例によれば、いずれも泉州市の出身者が他国や他地域で起業し成功した後に、地元に投資をするというものである。このことは、中国のWTO加盟により、これから華僑による故郷への投資が増加する可能性が高いことを示唆している。両市の私営企業では、一般的に出稼ぎ労働者が主たる戦力となっている。各社とも、職種内容や雇用契約においては、出稼ぎ労働者と地元地域の労働者との間に特段の違いを設けてはおらず、社会保険の保険料のみが政府の規定により異なる。私営起業で働く出稼ぎ労働者たちのどれほどが社会保険に加入しているのは、市政府も把握できずにおり、その実態は見えにくい。調査事例では、出稼ぎ労働者も社会保険に加入しているケースが多かったが、そのほとんどが親会社が国有企業であったり、株式会社形態であっても株保有が行政であったりする。他方、完全に政府から独立した企業(一事例)では、出稼ぎ労働者には社会保険は適用されていなかった。今後、労働市場の流動化がすすむにつれて、社会保険の制度と実態との乖離が問題となることが推測できる。また、出稼ぎ労働者であっても、その都市に根付くケースも多くみられ、出稼ぎ労働者の定義も曖昧になりつつある。他の労働条件と同様に、戸籍に関わらず同一化していく必要が高まってきている中国の実状が、調査から浮かび上がってきた。
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