2003 Fiscal Year Annual Research Report
都市近郊林における野生生物管理の手法開発に関する総合的研究
Project/Area Number |
13460062
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
青井 俊樹 岩手大学, 農学部, 教授 (70125277)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 淳樹 岩手大学, 農学部, 講師 (10322968)
國崎 貴嗣 岩手大学, 農学部, 講師 (00292178)
松原 和衛(伊藤 和衛) 岩手大学, 農学部, 助教授 (70258804)
佐藤 淳 岩手大学, 農学部, 助手 (30250632)
平野 紀夫 岩手大学, 農学部, 助教授 (40092308)
|
Keywords | ニホンカモシカ / 都市近郊林 / 行動圏 / 土地利用 / 血清タンパク多型 / 疫学的調査 / 寄生虫 / パラボックスウィルス |
Research Abstract |
生態調査:主として岩手大学農学部付属滝沢演習林およびその周辺域において、平成15年4月から同16年3月まで、継続してカモシカの行動圏、食性、土地利用などを対象にフィールド調査をおこなった。5月には滝沢演習林南部、四十四田ダム湖沿いの森林内で、一頭のカモシカ(オス、推定満一才)の生け捕りに成功した。捕獲個体は、外部形態などを計測後GPS発信器を装着し、捕獲地点において放獣した。その後、電波の追跡を継続的に行うことができた。調査個体は、放獣地点を中心に、ダム湖沿いの狭い森林帯(幅50〜100m)を往来することを繰り替えし、他地域へ大きく移動することはなかった。また、演習林内でのカモシカの食性および土地利用に関する調査について、食痕調査を2カ月ごとのルートセンサスによっておこなった。その結果、一般的には野生動物の生息地としては利用価値が低いと考えられている針葉樹人工林についても、落葉期間においては、各種灌木類が重要なエサ資源として多く利用されていることが明らかになり、落葉広葉樹林と常緑針葉樹林がパッチ状の混在した森林がカモシカの生息地として重要であると考えられらた。 疫学・生理学的調査:滝沢演習林で捕獲した雄1頭から血液を採取し、一般血液検査、内部・外部寄生虫検査、および、血清タンパク多型について調査した。また、パラポックスウイルス検査に向けて、動物衛生研究所から入手したウイルスを、ウシ精巣初代培養細胞に感染させて種ウイルスを作製した。子牛若しくは胎児の精巣入手が困難なため、株化細胞での増殖を検討中である。また、演習林内の溜め糞場より採集した排泄便48検体について、寄生虫卵検出を試みたところ、Moniezia属条虫卵(検出率;25.0%)、鞭虫卵(10.4%)、線虫(43.8%)、線虫仔虫(50.0%)、Eimeria属オーシスト4種(8.3-29.2%)、Giardia属シスト(42%)が検出され、各溜め糞場における検出状況は生息個体のなわばりを反映する傾向がみられた。 盛岡市周辺で得られた個体の血清タンパク多型の分析では、トランスフェリン(Tf)座位とアルブミン(Alb)座位をメインに分析した結果、Alb座位は2つの表現型(Type-A,B)が認められ、Tf座位では6つの表現型(Type-1〜6)が見られた。捕獲した個体は、Alb座位がType-A(2バンド)、Tf座位がType-4(4バンド)の表現型を持っていることが判明した。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Suzuki, T., T.Aoi, K.Maekawa: "Spacing pattern of introduced female raccoons in Hokkaido, Japan"J.of Mammal study. 28(2). 121-128 (2003)
-
[Publications] 能勢 峰, 青井俊樹: "岩手大学滝沢演習林におけるニホンカモシカの環境利用について"岩手大学農学部演習林報告. 34. 1-10 (2003)
-
[Publications] Miura, S., T.Oka: "Evaluation of hair trap using apples for genetic tagging for Asiatic black bear in Kitakami Highland, northern Honsyu, Japan"Mammal Study. 28(2). 149-152 (2003)
-
[Publications] Sato, R., O.Inanami, B.Shuto, J.Sato, M.Kuwabara, Y.Naito: "The plasma superoxide scavenging activity in canine cancer and hepatic disease"J.Vet.Med.Sci.. 65. 465-469 (2003)
-
[Publications] 増山浩一, 青木美樹子, 伊藤和衛, 出口善隆, 西村貴志, 青井俊樹, 板垣 匡: "岩手県内に生息するニホンカモシカ(Capricornis crispus)から得られた内部および外部寄生虫について"日本野生動物医学会大会講演要旨集. 9. 67 (2003)
-
[Publications] 西村貴志, 松原和衛, 出口善隆, 高橋寿太郎, 佐藤淳, 青井俊樹, 辻本恒徳: "盛岡市近郊に生息するニホンカモシカの血清アルブミンおよびトランスフェリンのタンパク質多型分析"日本哺乳類学会2003年度大会講演要旨集. 201 (2003)