2002 Fiscal Year Annual Research Report
代用糖によるプラーク細菌の齲蝕誘発能のコントロールに関する基礎的研究
Project/Area Number |
13470446
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
真柳 秀昭 東北大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (60005098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑 眞二 東北大学, 大学院・歯学研究科, 講師 (20208507)
岩見 憙道 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (60005030)
高橋 信博 東北大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (60183852)
佐藤 拓一 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (10303132)
松山 順子 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (30293236)
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Keywords | キシリトール / ミュータンスレンサ球菌 / PEP-PTS酵素活性 / グルコース / 糖代謝阻害 / 酸産生反応 |
Research Abstract |
前年度の研究から、キシリトールのミュ-タンスレンサ球菌に対する糖代謝阻害効果の生化学メカニズムが明らかになってきた。すなわち、キシリトールは、糖取り込み酵素(PEP-PTS)によってキシリトール5リン酸(X5P)となって菌体内に取り込まれ、菌体内に蓄積したX5Pが解糖系上流の酵素活性を阻害し、その結果、糖代謝全体が阻害されるものと考えられた。しかし、キシリトールによる代謝阻害時、解糖系最上流の糖代謝中間体であるグルコース6リン酸レベルが減少傾向にあったことから、もう一つのキシリトール阻害メカニズムとして、解糖系の初発段階、すなわちPEP-PTSに代表される「グルコースを取り込みリン酸化する酵素(群)」の阻害が示唆された。そこで本年度は、キシリトールのPEP-PTS阻害効果を検討した。 Streptococcus mutans NCTC10449の菌体をトルエン・アセトン処理によってpermeabilized cellsとし、これに基質としてPEPとグルコースあるいはさらにキシリトールを加えて、PEP-PTS活性を測定した。グルコースとキシリトールが共存すると、グルコースのみが存在しているときよりも、グルコース6リン酸の生成速度が低下した。この時PEP消費速度は変化しないことから、キシリトールはグルコースと競合しながらPEPを利用しX5Pとなること、そしてグルコースが利用できるPEP供給速度が低下する結果グルコースのリン酸化(グルコース6リン酸生成)速度が低下することが考えられた。なお、競合によるグルコースリン酸化速度の低下は、PEP濃度が低いほど顕著であった。 以上のことから、もう一つのキシリトールの糖代謝阻害メカニズムとして、PEP-PTSの基質であるPEPに対するキシリトールとグルコースなどの他の糖との競合が示唆された。
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Research Products
(17 results)
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[Publications] 高橋 信博: "歯垢生態系への生化学的アプローチ"東北大歯誌. 21(1). 18-32 (2002)
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[Publications] 高橋 信博: "プラーク細菌への糖アルコール・インパクト"Dental Diamond. 27(10). 64-69 (2002)
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[Publications] Takahashi N: "Dipeptide utilization by periodontal pathogens, Porphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Prevotella nigrescens and Fusobacterium nucelatum"Oral Microbiol Immunol. 17(1). 50-54 (2002)
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[Publications] Iwami Y: "Intracellular and extracellular pHs of Streptococcus mutans after addition of acids : loading and efflux of a fluorescent pH indicator in streptococcal cells"Oral Microbiol Immunol. 17(4). 239-244 (2002)
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[Publications] Tada H: "Proteolysis of CD14 on human gingival fibroblasts by arginine-specific cysteine proteases (Gingipains-R) from Porphyromonas gingivalis leading to down-regulation of lipopolysaccharide-induced Interleukin-8 production"Infect Immun. 70(6). 3304-3307 (2002)
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[Publications] 角田初恵: "ミュータンスレンサ球菌の各種糖質における増殖と酸産生に及ぼすキシリトールの影響"小児歯誌. 40(2). 308 (2002)
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[Publications] 岩見憙道: "キシリトールはStreptococcus mutansのホスホエノールピルビン酸依存性グルコース取込みを抑制する"歯基礎誌. 44(5). 461 (2002)
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[Publications] 前原裕子: "フッ素によるミュータンスレンサ球菌の糖代謝抑制効果はキシリトール併用により増強するか"歯基礎誌. 44(5). 462 (2002)
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[Publications] 多田浩之: "Porphyromonas gingivalis gingipainsによるヒト口腔上皮細胞のICAM-1分解"日本細菌学雑誌. 57(1). 159 (2002)
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[Publications] 加藤一夫: "nested PCRを利用した歯垢内の齲蝕関連菌の層別分布解析"口腔衛生会誌. 52(4). 568-569 (2002)
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[Publications] 山浦みゆき: "顎顔面領域の慢性感染病巣からのPCR法による細菌検出"歯基礎誌. 44(5). 464 (2002)
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[Publications] 真柳弦: "慢性辺縁性歯周炎病巣からの歯周炎関連細菌26菌種のnested PCR法による検出"歯基礎誌. 44(5). 464 (2002)
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[Publications] 松山順子: "小児歯垢中に存在するS. mutansとS. sobrinusのPCR法による検出頻度の各年齢層別の比較"歯基礎誌. 44(5). 467 (2002)
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[Publications] 佐藤拓一: "齲蝕及び歯周病関連細菌の16S rRNA genes nested PCR法による高感度検出"歯基礎誌. 44(5). 470 (2002)
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[Publications] 熊谷 崇: "歯垢中のmutans streptococciのPCR法による検出について"東北大歯誌. 22(1)(印刷中). (2003)
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[Publications] 菊地 吾郎: "一般医科学"南山堂. 391 (2002)
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[Publications] 高橋 信博: "砂糖と虫歯のサイエンス・ノンフィクション In:「砂糖と健康の科学」"砂糖を科学する会. 14 (2002)