Research Abstract |
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は,歯周局所で,健常部位での健康維持,病変部位での進行ならびに治癒に関与していることが予測される。本年度は,1)歯肉溝滲出液(GCF)中のVEGFの動態をELISA法を用いて検討し,2)培養歯周組織由来細胞に対するVEGFの作用を検討した。その結果,1)歯周基本治療前後でのGCF中のVEGF量の増加は,ポケット深さの増加,付着レベルの悪化,歯周ポケットからの出血と有意な相関を示し,歯周病の進行と密接に関連していることが明らかとなった。2)VEGFは,歯根膜由来線維芽細胞細胞におけるオステオカルシン、オステオポンティンmRNAの発現や石灰化物の形成を促進することにより,歯根膜細胞を骨系細胞へ誘導する作用が認められたが,歯肉線維芽細胞には,その様な分化誘導作用を示さなかった。さらに,3)歯周組織再生療法へのVEGFの応用について検討するために,ビーグル犬を用いて,歯槽骨欠損を伴った歯周炎モデルを作成し,歯周組織再生療法を行った。すなわち,歯周外科処置時に,VEGFをゼラチンあるいはポリ乳酸と混和した後,骨欠損部の歯根面に塗布し,歯肉弁を縫合した。対照として,FOを行った。3ヶ月後に屠殺し,顎骨を摘出した。外科処置後の治癒期間中,臨床的には問題となる所見は認められず,臨床パラメーターは,実験側,対照側ともに良好な値を示した。現在,組織学的計測を実施するために組織標本の作製を行っており,今後,組織学的に付着レベルの変化,新生セメント質の形成,歯槽骨の改善等について検索する予定である。
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