2001 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア地方都市華人の地域間移動に関する実証的研究
Project/Area Number |
13572002
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
荒井 茂夫 三重大学, 人文学部, 教授 (00159477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 恭子 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00167496)
田村 慶子 北九州市立大学, 法学部, 教授 (90197575)
安食 和宏 三重大学, 人文学部, 助教授 (00231910)
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Keywords | 華人社会 / 華僑史 / 社会史 / 移動・移住 / 華文中学 / 中華経済圏 / 国際情報交換 / シンガポール:マレーシア:インドネシア:ブルネイ |
Research Abstract |
東南アジア地方都市華人の移動について、従来の研究に欠けていた大衆レベルでの移動の実証を行う目的で、本年度はマレーシア、シンガポールにおいて、各分担者が調査票の配布と聞き取りを行った。シンガポールでは同国立大学の学生、企業管理者層、商店経営者を対象に配布し、現時点でそれぞれ90部、19部、20部が回収されている。マレーシアではクアラルンプール新紀元学院で300部、華社研究センター、マラヤ大学の協力者を通して、学生、企業管理者層、労働者、商店主などを対象に200部配布し、回収中である。サラワク州でもクチン、シブ、ミリの各市で社会上層を対象に調査を行い、100部配布し、現時点で各階層合計40部回収されている。またサバ(コタキナバル、サンダカン)、サラワクでは華文独立中学5校の生徒の家長を対象に300部配布し、回収中である。分析は今年度に入る。本研究の「移動」の定義は移住の意味も含め、経済或いは社会目的的な長期的移動や定住という幅のある概念である。聞き取り調査の範囲では、特に地方都市の企業家でも国境を越えた投資と同時に国外での不動産や住居の所有はごく自然で、中華経済圏的歴史理論が提示している典型である。しかし大衆レベルでみると、就業機会が最大の動機となると考えられるが、クアラルンプールやシンガポールなどの大都市に向かうばかりでなく、地方小都市から中都市への経済動機による移動が目立つ。地方都市の発展が地方都市間での労働移動を吸収できるようになっている。また、私立大学の自由化でオーストラリアやニュージーランドの大学が分校を設立するようになったので、教育動機による移動にも変化がみられると思われる。かつてのように家族の重責を担い覚悟のもとに町を出るという歴史的現象は薄れつつあるようだ。華人居住環境のよいシンガポールやマレーシアへの移動を含め、体制の異なるインドネシアとの比較が重要で、8,9月に調査する。
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[Publications] 荒井茂夫: "方修論-華文文学発展の啓示- 方修作品国際学術会議論文集"(予定)2002.
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[Publications] 安食和宏: "ベトナム南部神座一地区におけるマングローブ植林事業の展開と住民生活"人文論叢. 19(予定). (2002)
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[Publications] 田村慶子: "シンガポールを知るための60章"明石書店. 259 (2001)
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[Publications] 田村慶子: "シンガポールのミドルクラス創出と政治意識"服部民夫編「アジア中間層の生成と特質」. 105-132 (2001)
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[Publications] 田中恭子: "国家と移民-東南アジア華人世界の変容」"名古屋大学出版会. (予定).
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[Publications] 田中恭子: "中国の対外関係と華僑華人"共著「中国をめぐる国際環境」. 279-311