2003 Fiscal Year Annual Research Report
ミャンマー国に於ける環境毒性物質としての鉄による肝癌発症若年化に関する調査研究
Project/Area Number |
13576001
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小路 武彦 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30170179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和泉 伸一 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (40264246)
江島 邦彰 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (30309984)
菱川 善隆 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 講師 (60304276)
安倍 邦子 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (00253641)
岡田 茂 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (20033201)
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Keywords | ミャンマー / 肝癌 / 鉄 / 鉄反応エレメント結合蛋白 / 肝炎ウイルス / アポトーシス / Fas / Fasリガンド / 分子組織細胞化学 |
Research Abstract |
ミャンマー国では、肝癌の発症は30代前半から見られ、低年齢での肝癌死亡例が多数経験されている。この原因の一つとしてミャンマー国土に高濃度で含まれる鉄の過剰摂取の関与が指摘されている。そこで本研究では、ミャンマー国立医学研究所(DMR)との共同研究として肝癌患者より剖検肝標本を採取し、肝細胞に於ける鉄沈着及び鉄反応エレメント結合蛋白(IREBP)の発現動態と肝細胞の増殖及び死の動態とを鉄過剰摂取ラットモデルでの結果も踏まえ分子組織細胞化学的に解析することを目的とした。本年度は、DMRのDr.Ne Winとの密接な連絡のもとに平成15年12月18日から12月22日ヤンゴン並びにその周辺都市に滞在し、1)非放射性in situ hybridization法の実習会をDMR内外から20名以上の研究者の参加のもと成功裏に開催した。2)今回もHCV陽性例を中心として肝癌試料の採集を行ない、昨年及び一昨年を併せて30例を超す規模となった。3)鉄の沈着状態を明らかにするためベルリン青染色を行なった所、癌部に於いて日本人検体と比較して明らかな鉄の過剰沈着が見い出された。一方、IREBPの発現状態に関しては、反応性賦活化の際の形態損傷を避けがたく明確な判定は困難であった。4)これらの試料に於いて、Ki-67染色とTUNEL法を行ない癌細胞動態を検討した結果、増殖活性の高い試料ではTUNEL陽性率が低く、逆に増殖活性の低いものではアポトーシス率が高かった。またアポトーシス率の高い試料でのFasリガンド発現の誘導が判明した。5)鉄過剰摂取ラットモデルにて、部分肝切除を行ない鉄過剰下での肝再生過程を検討した結果、肝細胞への鉄の顕著な沈着とDNA合成のピークの早期化と促進が認められた。またアポトーシスの頻度は、鉄付加によって顕著に増大していた。以上の結果は、鉄の過剰摂取が特に増殖刺激下での肝細胞ターンオーバーを促進し、肝癌発症並びにその進展に寄与している可能性を示唆する。
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[Publications] Imaizumi, Y.: "Expression of the c-Met proto-oncogene and its possible involvement in liver invasion in adult T-cell leukemia"Clin.Cancer Res.. 9・1. 181-187 (2003)
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[Publications] Okada, K.: "Expression of tumor-associated membrane antigen, RCAS1, in human colorectal carcinomas and possible role in apoptosis of tumor-infiltrating lymphocytes"Modern Pathol.. 16・7. 679-685 (2003)
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[Publications] Koji, T.: "Germ cell apoptosis and its molecular trigger in mouse testes (Review)"Arch.Histol.Cytol.. 66・1. 1-16 (2003)
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[Publications] Yamamoto-Fukuda, T.: "Possible involvement of keratinocyte growth factor and its receptor in enhanced epithelial-cell proliferation and acquired recurrence of middle-ear cholesteatoma"Lab.Invest.. 83・1. 123-136 (2003)
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[Publications] Hishikawa, Y.: "Molecular histochemical analysis of estrogen receptor α and β expressions in the mouse ovary : In situ hybridization and Southwestern histochemistry"Med.Electron Microsc.. 36・2. 67-73 (2003)
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[Publications] Ashizawa, M.: "Detection of nuclear facator-kB in IgA nephropathy using southwestern histochemistry"Am.J.Kidney Dis.. 42・1. 76-86 (2003)
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[Publications] 小路武彦: "遺伝子組織化学総論[組織細胞化学2003](日本組織細胞化学会編)"学際企画. 12 (2003)