2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610052
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北村 清彦 北海道大学, 文学研究科, 教授 (70177864)
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Keywords | 芸術 / 進化論 / 環境 / 物質 / 美学 |
Research Abstract |
本研究は進化論の立場から芸術を考察しようとするものである。進化論は今や完全にダーウィンの手から離れ、生物学や医学、物理学などの自然科学分野から文化人類学、社会学、美学などの人文科学に至るまで、その適応可能性が実証され、また思想的な問題を提示している。そのためにまず何よりも多元的な可能性を孕んだものとしての「進化」の概念を明らかにする必要がある。ことによったらそこには相矛盾する考え方を見いだせるかもしれないし、その点にこそ「進化」を解釈学的に理解する手がかりが存在するのである。そこで本年度はまず、「進化」の概念の本質把握に努め、自然科学系の資料にあたりながらダーウィニズムの変容と、この「進化」概念の多様な文化現象への適用の経緯を明らかにした。 まずビッグバーン理論以降の宇宙進化モデルの思想的背景を解明し、それと同時代の芸術現象が一種の並行的関係であることを指摘した発表を、国際美学会(2001,8,幕張)にて行い、その論文は今年度の国際美学会のイヤーブックに採択された。 また進化には様々な倫理的問題が伴わざるをえないが、特にこの点について美学会全国大会(2001,10早稲田大学)におけるシンポジウムのパネラーとして環境美学の観点からの意見を発表した。進化がもたらした環境の問題の解決のためには進化の概念の再検討が必要なのであるが、この発表は美学がこの再検討に果たしうる可能性を主張し、今後の進化と倫理の関係についての美学を構築する基礎とすることができた。 さらに古代から現代に至るまでの物質観の進化について、またそれが今日のわれわれの自然観や芸術運動にどのように関係しているのかについても検討を進め、それは「物質の美学」と題された論文にまとめられ、来年度の国際美学会のイヤーブックに掲載されることになった。
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