2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610055
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小田部 胤久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (80211142)
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Keywords | 普遍主義 / 特殊主義 / ゴシック復興 / 歴史意識 |
Research Abstract |
本年の研究は、大きく次の2つの分けられる。 (1)18世紀美学理論における「普遍主義」と「特殊主義」の対立を、「方位」の問題に即して明らかにすること。この研究成果は、11月2日から5日にかけて静岡で開かれた日本音楽学会創立50周年記念国際会議(IMJ)におけるワークショップ「18世紀音楽美学における普遍と特殊」において、英語で報告した。また、そのワークショップの参加者ジスレーヌ・ゲルタンの勧めにより、その仏語版がカナダ・モントリオール大学の研究雑誌に公表されることになった。この研究では、18世紀中葉から19世紀初めにかけての美学理論を2つの段階に即して検討した。第1の18世紀中葉における古典主義的理論が古代ギリシアという特殊を普遍的な価値へと高めつつ、他面、特殊近代的な現象を否定されるべきものと評価したのに対し、第2のロマン主義的段階は、特殊の内にこそ普遍が存在しうる、という立場に立って、特殊と普遍を媒介する「歴史」に注目する。この点を明らかにした上で、私は、18世紀末における「音楽史記述」の問題を扱い、フォルケルの『一般音楽史』の歴史観を検討した。 (2)ロマン主義の時代における「ゴシック復興」のあり方を、シュレーゲル兄弟の理論的著作の内に探りつつ、それを、ゲーテの議論との連関の内に明らかにすること。この研究は3月初めに私が開くコロキウム(参加者はブレーメン大学ロータール・クナーツ氏、および岡山大学山口和子教授)においてドイツ語で報告した。ここでは、18世紀という近代の成立期における「中心の喪失」の意識が、いかに新たな中心の再興を求める運動へと変化していくのか、文献学的に明らかにすると共に、こうした運動を支える美学的・哲学的背景に光を当てた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Otabe, Tanehisa: "'The Universal' and 'the Particular' in Aesthetic Theory : From the Enlightenment to Early Romanticism"The Act of the IMJ. (印刷中).
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[Publications] Otabe, Tanehisa: "La genese de l' <<histoire de l'art>>. L'universel et le particulier dans les theories esthetiques de l'epoque des Lumieres au debut du romantisme"Horizon phiosophique. (印刷中).
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[Publications] 小田部 胤久: "ゴシックと表現主義の邂逅--ヴォリンガーによる「ヨーロッパ中心主義的」芸術史の批判とその行方--"美学芸術学研究. 21(印刷中). (2002)
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[Publications] Otabe, Tanehisa: "Die Originalitat und ihr Ursprung. Begriffsgeschichtliche Untersuchung zur modernen Asthetik"JTLA. 27(印刷中). (2002)
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[Publications] 小田部 胤久: "美学理論における歴史の呪縛"UP. 7月号. 17-25 (2002)