2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610419
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森 紀子 神戸大学, 文学部, 教授 (50241154)
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Keywords | 陳煥章 / 『孔門理財学』 / 西本白川 / 『上海(週間)』 / 辜鴻銘 / 『教養と無秩序』 / M・アーノルド |
Research Abstract |
平成15年度は、康有為をはじめとする清朝の遺老が多く滞在した青島の文化状況と、その地に礼賢書院(孔子協会)を建て、遺老との交流を深めていたドイツ人宣教師リヒアルト・ヴィルヘルムについて考察を進めることによって、民国初期の文化保守派の錯綜した状況が明らかになってきた。中でも、リヒアルト・ヴィルヘルムの翻訳紹介を通じてドイツに広くその名が知られることになった辜鴻銘の思想が新たな課題となった。海峡植民地の出身であり、英国留学生でもあった辜鴻銘は、張之洞の幕客であったが、辛亥後は清朝の遺老を称していた。孔教会の発起人である沈曾植とも親しく、沈曾植に師事した西本白川が上海で編集していた邦字新聞『上海(週間)』からも辜鴻銘の記事を拾うことができた。M・アーノルドの著作『教養と無秩序』に思考の枠組みを置いた辜鴻銘のユニークな儒教思想については、京都大学人文科学研究所の「中国近代化の動態構造」共同研究班において口頭発表(7月)ののち、「遺老辜鴻銘における文化保守の論理」と題して、森時彦編『中国近代化の動態構造』(京都大学人文科学研究所、2004年2月出版)に掲載された。また平成16年1月29日〜2月3日にかけてドイツ、マールブルグ大学を訪問し、M・ユーヴェルヘルト教授のゼミにおいて「近代中国の宗教運動と保守思想」について報告を行うとともに、辜鴻銘のドイツ語著作に関する資料収集を行った。また、基礎データーとして、大正12年度『上海(週間)』(1号〜47号)の記事索引を作成した。なお、陳煥章については、彼がコロンビア大学に提出した博士論文The economic principles of Confucius and his school(孔門理財学)の復刻版を、最近、入手することができた。本書の分析は今後の課題としたい。
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