2001 Fiscal Year Annual Research Report
12,13世紀北中部イタリアにおけるカタリ派異端と教会、都市の諸関係
Project/Area Number |
13610463
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小田内 隆 立命館大学, 文学部, 教授 (20185606)
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Keywords | カタリ派 / 異端 / 中世イタリア都市 / 教皇権 / アレルヤ運動 |
Research Abstract |
北中部イタリアにおけるカタリ派異端に対する教皇と諸都市(コムーネおよび司教)の態度と行動の研究のために、今年度は研究史の検討、資料収集を中心に、基礎的な作業を進めた。その結果、12〜13世紀における北・中部イタリア諸都市を舞台とした異端の広範な展開と、それに対する対応についておよそ以下の見通しがえられた。 (1)13世紀以前の北・中部イタリア諸都市には異端の訴追に対する一貫した態度は認められず、むしろ教皇の異端政策と立法の受容を妨げる諸要因が存在した。この結果、カタリ派を初めとする諸異端が多かれ少なかれ自由に展開する空間が生じた。 (2)この困難の一部は教皇、皇帝とコムーネの間の錯綜した諸関係という。この地域に固有の政治・社会的状況から理解される。しかし、協会の異端立法は13世紀前半の間に徐々にコムーネの都市条例に採用され、異端は重大な犯罪として位置づけられていく。 (3)この過程は都市によって様々であって容易に一般化されないが、とくに2つの要因がその実現に作用したように思われる。教皇による介入、そして1233年のいわゆる「アレルヤ」運動以降に本格化する托鉢修道士による民衆教化の新しい局面が、それである。 以上の認識を南フランス(ラングドック地方)におけるパターン(対異端十字軍と異端審問)と比較すると、教皇の果した役割の大きさ、民衆に対する説教活動の意義という点が北・中部イタリアの特殊性として際立っていることが明らかとなった。
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