2003 Fiscal Year Annual Research Report
12,13世紀北中部イタリアにおけるカタリ派異端と教会、都市の諸関係
Project/Area Number |
13610463
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小田内 隆 立命館大学, 文学部, 教授 (20185606)
|
Keywords | 異端 / 異端審問 / カタリ派 / コムーネ |
Research Abstract |
最終年度にあたる本年度は研究課題をより広く異端研究上の展望に位置づけることをめざし、少なくとも今後の実証的な研究の方向性と理論的な基盤を確立するために、次の二つの問題点について研究を深化させた。まず第一に、中世における異端概念の諸側面とその発展を第四ラテラノ公会議(1215年)までフォローし、ラングドックやイタリアの異端審問官が前提としていた異端概念のあり方を検討した。とくに、17世紀に確立された今日のカトリックの異端概念とは異なって、規律的な側面が強調され、「不服従の異端」ともいうべきものが支配的であったことが明らかにされた。第二に、イタリアの異端審問研究は理論的、方法論的に著しく立ち遅れていることから、ここ十年ほどで新しい視点と方法論から研究が進んでいるラングドック地域の研究成果の摂取・検討に努めた。James B.Givenによる異端審問官の権力テクノロジー研究、John H.Arnoldによる「告白制度」としての異端審問に関する研究が、とくに有益であった。上記の異端概念研究とつき合わせ、フーコー的な権力論の観点から課題にアプローチする手がかりが得られたととが、最大の成果であった。最後に、後半には課題研究の計画にあった13世紀のイタリア都市、オルヴィエトについて個別的事例研究を進め、カタリ派異端とイタリアの都市コムーネ、教会との関係についての今後の研究を準備した。以上の成果の一端を「研究成果報告書」にまとめる。
|