2002 Fiscal Year Annual Research Report
原始的補体系の解析に基づく円口類の系統発生的位置づけに関する研究
Project/Area Number |
13640700
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Research Institution | Hiroshima Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
藤井 保 県立広島女子大学, 生活科学部, 教授 (10181314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 芳明 県立広島女子大学, 生活科学部, 教授 (30154462)
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Keywords | 円口類 / メクラウナギ類 / ヌタウナギ / 補体系 / マンノース結合レクチン関連セリンプロテアーゼ(MASP) |
Research Abstract |
円口類に分類されているメクラウナ(hagfish)やヤツメウナギ(lamprey)では,抗体非依存的に活性化されオプソニン活性を発現する原始的な補体系が存在し,生体防御の主要な部分を担っている。メクラウナギ類では,限定分解を受けてオプソニン活性を発現する補体第3成分(C3)の性状が既に明らかになっている。しかし,この限定分解反応に関与するセリンプロテアーゼの情報は得られていない。そこで,セリンプロテアーゼ(相当成分)をコードするcDNAを単離し,同成分の1次構造の解明を試みた。最初に,哺乳類B因子およびC2のセリンプロテアーゼ・ドメインのアミノ酸配列を元にPCRプライマーを作成し,メクラウナギの一種,ヌタウナギ(Eptatrerus burgeri)の肝臓mRNAから同ドメイン様のcDNA断片(230bp)をRT-PCR法により増幅した。次ぎに同断片をプローブとして用い,ヌタウナギ肝臓cDNAライブラリーをスクリーニングし,同種セリンプロテアーゼ(補体成分)の全1次構造をコードする完全長dDNAクローン(2,290bp)を単離した。このcDNAクローンは712残基のアミノ酸をコードする翻訳領域を含んでいた。推定アミノ酸配列は,補体成分の一つであるマンノース結合レクチン関連セリンプロテアーゼ(MASP)と高い相同性が認められ,推定されるドメイン構造は有顎脊椎動物のMASP-1に一致していた。また,活性中心セリンがTCNでコードされていること,セリンプロテアーゼ・ドメインが分断エキソンによってコードされていることが明らかになった。これらの結果は,推定アミノ酸配列がヌタウナギMASP-1をコードするものであることを強く支持している。本研究成果は円口類におけるMASPの存在様式やMASPファミリー分子群の分子進化を理解する上で極めて重要な知見である。
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Research Products
(2 results)