2001 Fiscal Year Annual Research Report
DBFアレーアンテナによるリアルタイム到来方向推定システムとその応用に関する研究
Project/Area Number |
13650403
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
新井 宏之 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (00193053)
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Keywords | アダプティブアレーアンテナ / 到来方向推定 / MUSIC法 / ESRPIT法 / 固有値問題 |
Research Abstract |
本研究は、アダプティブアレーアンテナによる高精度かつ高速な到来波推定を行うことを目指すものである。平成13年度は、高速ディジタル処理を前提として、各種アルゴリズムについて検討を行った。 まず、到来波推定問題で不可避となる固有値問題について、代数演算を適用して固有値・固有ベクトルを導出するアルゴリズムを提案し、その効果を検証した。MUSIC法やESPRIT法など、相関行列の固有値を介した到来波推定アルゴリズムでは、高精度な推定が可能となる反面、計算の複雑さが問題となる。特にESPRIT法では複数回の固有値・固有ベクトル導出のプロセスが必要となり、高速処理の妨げとなっている。本研究では、一般的なQF分解法で固有値を導出するのではなく、低次代数方程式を解く問題に帰着させることで、計算時間を大幅に短縮させることを可能にした。こうした代数演算は有限語長演算において精度が著しく低下する場合があるが、そのような精度の劣化を伴わず、高速処理可能な固定小数点ディジタル演算においても十分な精度を維持できることを示した。また、シミュレーションを通して、実際に到来波推定が高精度に行われることを示した。 次に、MUSIC法やESPRIT法など、既に提案されている代表的な到来波推定アルゴリズム6種について、ディジタル回路での演算を前提とした場合の推定精度の評価を行った。リアルタイムで到来波推定を行うシステムを構築することを考えると、DSPやFPGAなどのディジタルプロセッサ、特によりフレキシブルな処理が可能なFPGAの利用価値が高い。しかしながら、こうした素子では演算が限られて、低ビット長の固定小数点演算しかできないなど、演算の精度が問題となる。そこで、既存の到来波推定アルゴリズムを固定小数点演算で実現した場合、推定精度が最も良くなるのはどのアルゴリズムであるか検討した。シミュレーションでは、スナップショット数、SN比、アレー素子数、サブアレーの数、サブアレー内のアンテナ素子数など、考えられる限りのパラメータを変化させ、あらゆる場面を想定して各アルゴリズムの評価を行った。従来、ディジタル化を前提としない場合にはESPRIT法などの推定精度が高いと考えられていたが、様々な観点からのシミュレーションの結果、Unitary Root-MUSIC法が最も適しているとの結論を得た。この結論は、固定小数点演算を前提としてはいるが、ある程度長いビット長を想定していることに問題が残り、現在一般的に用いられているディジタルプロセッサではまだ実現が困難であると言わざるを得ない。今後は、実現可能性を考慮しつつ推定精度を検討していく予定である。また、検討結果に基づいて、システムを実現することが課題となる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 市毛弘一, 品川仁, 新井宏之: "An Algebraic Approach for Deriving Eigenvalues and Eigenvectors of Correlation Matrices toward the Fast DOA Estimation"電子情報通信学会技術報告. AP2001-8. AP2001-65 (2001)
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[Publications] 品川仁, 市毛弘一, 新井宏之: "各種DOAアルゴリズム実装における特性の比較検証"電子情報通信学会技術報告. AP2002-3. AP2001-220 (2002)
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[Publications] 品川仁, 市毛弘一, 新井宏之: "各種DOAアルゴリズム実装における特性の比較検証"電子情報通信学会総合大会講演論文集. B-1-19 (2002)
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[Publications] Koichi Ichige, Masashi Shinagawa, Hiroyuki Arai: "An Algebraic Approach To Eigenproblems toward Fast DOA Estimation"Accepted for Proceedinge of 2002 URSI General Assembly. (2002)
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[Publications] Masashi Shinagawa, Koichi Ichige, Hiroyuki Arai: "Performance Evaluaton of DOA Estimation Algorithms in Digital Implementation"Accepted for Proceedings of 2002 URSI General Assembly. (2002)