2003 Fiscal Year Annual Research Report
海馬障害モデル動物のストレス下における神経細胞死と細胞新生について
Project/Area Number |
13670986
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Research Institution | SHIGA UNIVERSITY OF MEDICAL SCIENCE |
Principal Investigator |
定松 美幸 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (90252387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 秀樹 独立行政法人国立環境研究所, 内分泌かく乱物質及びダイオキシン類の管理とリスク評価プロジェクト, 主任研究員 (00232596)
増井 晃 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (80190346)
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Keywords | 細胞死 / 海馬傷害 / 有機スズ / マイクロアレイ |
Research Abstract |
本年度は、主として有機スズによる海馬障害を予防する免疫抑制剤について検討した。免疫抑制剤を有機スズ投与後に投与し、細胞死について、免疫染色、TUNEL法を用いて計測したところ、明らかに細胞死の抑制効果が認められた。しかしながら、有機スズによるラット海馬神経細胞脱落は、歯状回、CA3,CA1と経時的に進行するのに対して、免疫抑制剤の後投与は、CA1の細胞脱落を抑制するにとどまり、CA3の細胞脱落には効果がなかった。 免疫抑制剤が有機スズによる海馬神経細胞死を一部であれ、抑制することは、細胞死にどのようなメカニズムが働いているかを解明する手がかりとなりうると考え、有機スズ投与、免疫抑制剤投与、それぞれでどのような遺伝子発現が変化するかをマイクロアレイを用いて解析した。 ラット海馬を取り出し、totalRNAを抽出し、マイクロアレイに供した。結果、有機スズ投与により1)グリオサイトーシスにかかわる遺伝子発現がコントロールに比べて上昇しており、炎症反応が起こっていること、2)アポトーシスを抑制する遺伝子発現が減少しており、細胞死が誘発されていることが明らかになった。免疫抑制剤投与後は逆に、神経保護効果のある遺伝子の発現が上昇、グリオサイトーシスに関わる遺伝子の発現が減少していた。これを定量的RT-PCRを用いて、グリオサイトーシスに関与する遺伝子発現の減少を詳しく検討した。 結果、免疫抑制剤はCaM-kinase II inhibitor α, programmed cell death repressor, BCL-xl, Bcl-x αなど神経保護作用を持つ因子の遺伝子発現の上昇を促すことで神経細胞死を抑制し、一方でglutathione S-transferase, Matrix Gla protein (Mgp), osteopontinなどグリオサイトーシスを促進させる因子の遺伝子発現を抑制することで炎症反応を抑制し、結果として細胞保護作用を発揮すると考えられた。 これらの結果は現在投稿準備中である。
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