Research Abstract |
簡易スクリーニング法のための計測項目を確立するために,発熱により誤嚥性肺炎を疑い嚥下造影検査を行った一つの療養型病床群の患者のうち,意識障害を持つ65歳の高齢者31人(男性28名,女性15名,平均年齢85歳)を対象とし,その画像所見と予後との関係を調査した。但し,予後判定は嚥下検査後1ヶ月後から半年以内に死亡した場合予後不良とした。予後不良は9人であった。嚥下造影検査で異常像と考えられる舌口蓋閉鎖不全,嚥下終了後咽頭部残留,嚥下反射大幅遅延,誤嚥は全症例と予後不良とはそれぞれ,8名と7名,11名と6名,4名と2名,27名と9名であった。但し,誤嚥は全て少量誤嚥であった。以上より予後不良の指標となりうる舌軟口蓋閉鎖不全と嚥下終了後咽頭部残留について計測項目にできないか研究を続けた。 同意の得られた正常被検者3人に座位姿勢で予め造影剤10mlを口腔に保持し,音声にて命令嚥下を行った。嚥下検査は超音波画像検査とX線嚥下造影検査を同時に行った。当初の予定では頭部固定装置を開発して用いる予定だったが,その固定装置を用いて事前に描写部位の再現性を検討したが,再現性が良くなかったので,その装置を用いずに超音波画像で描写する部位を合わせた。舌軟口蓋閉鎖の描出が可能かどうか,矢状方向にプローブ面の長軸を顎下部に当てながら超音波画像を取得すると同時に,頭部側方よりX線画像を同時取得した。また,嚥下終了後咽頭部残留を描出させるために垂直方向にプローブ面の長軸を右側方より中頚部に当てながら超音波画像を取得すると同時に,頭部正面(PA方向)よりX線画像を同時取得した。音声を基準に,それぞれの画像から1つの合成画像を作成し,1フレームづつ分析して,描出可能かどうか検討した。舌軟口蓋閉鎖は超音波画像における軟口蓋の鼻側部の線を基準とすれば,嚥下中,舌と軟口蓋が接している間,3人中3人で可能であった。梨状陥凹は最大咽頭収縮時期をのぞいて3人中3人で描出可能であった。逆に喉頭蓋谷は最大咽頭収縮直前直後において3人中2人で可能であった。しかしながら正常人を対象としたので,嚥下終了時に咽頭残留は認めなかった。 嚥下後咽頭部違和感のあるボランティア1名について内視鏡下で,梨状陥凹の粘着痰の残留を確認しながら,携帯型超音波装置で測定した。超音波画像上の梨状陥凹部が高エコー領域を示した。 以上より携帯型超音波装置を用いた嚥下障害の簡易スクリーニング法のための指標は鼻側軟口蓋線の有無と梨状陥凹部の高エコー領域の有無が為りえる可能性を示した。
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