Research Abstract |
今年度は,これまで6年間大阪地域のある団体で続けてきた参与観察を続けながら,各地(長野県小諸市,広島県広島市,茨城県竜ヶ崎市,鹿児島県鹿児島市,沖縄県,神奈川県横浜市,兵庫県神戸市)を訪問し関係者に対して情報・意見交換を行った。 そのうち,参与観察は,団体が主催し,地域住民等がボランティアでかかわっている渡日児童・生徒に対する「放課後の居場所作り」の現場で,本報告者(研究代表者)自身もボランティアとして参加するという形態で行った.ここでは,子どもたちは,友人との交流,日本語,母語,教科等の学習,種々の相談などを行なっている。一方,子どもや保護者等の声をできるだけ受けとめ,日本社会側に発信し,共鳴し合える人々・団体と,日本社会側の変容に向けた活動を行ってきた。今年度は,秋に子どもたちを発題者としたフォーラムを行い,年度末にも全国規模のフォーラムを企画した。これらのイベントは,この現場にかかわる人々がともに学んだ事柄を,社会に向けて発信する機会としつつも,イベントそのものから豊かなメッセージ:情報を受け取るという機会にもなっている。 今年度のこれら調査研究活動をとおして最も強く感じられたことは,「子どもたちにとって,母語の運用能力の維持・向上のための体制の保障とアイデンティティーのケアへの配慮が必要だ」ということであり,受け入れ体制・教育環境整備の必要性が感じられる。それは,低年齢で渡日したり日本で生まれたりした子どもの問題も,かなり報告されるようになったことにもよる。次年度以降,さらに調査研究を続け,これらについてめ検証を行い,さらに問題点をはっきりさせ,改善の方向を探りたい。
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