2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680361
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉岡 英幸 早稲田大学, 日本語研究教育センター, 教授 (00092461)
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Keywords | 明治期 / 日本語教材 / 振武学校 |
Research Abstract |
今年度は、国立教育政策研究所図書館をはじめ諸機関を調査し、明治36年に開校した振武学校の以下の日本語教材を収集、分析し、構成・内容から見た特徴、改訂の基本方針などを探った。 A.『語文教程』巻1〜巻7(明治37年発行) B.『日本語会話教程』(明治39年発行) C.『日本言文課本』首巻、巻1〜巻4(明治39年) D.『漢訳日本言文課本全』(明治39年) Aの教材は、全7巻計339課で構成された明治期最も大規模な日本語教材といえる。その特徴は規模の大きさだけでなく、軍人養成のための専門教材で、各課に軍や軍人に関するトピックを多く選んでいることである。そして2年後に大幅な改訂作業が行われCを完成させたが、その巻ごとの各課の内容を比較調査したところ、次のようなことがわかった。Aの巻1計50課はほとんど内容を変えずにCの首巻とし、Aの巻2から巻7まではいいものだけを残し、足りないものを新たに付け加えるなどし、Cの4巻計200課にまとめた。その編集方針は、到達目標を変えないこと、学習時間数にあわせて内容をスリムにしたこと、学習対象者である軍人志願者のために必要な語彙、知識を習得させるため、特に巻4は軍や軍人、また天皇制におけるあるべき軍人精神などに関するトピックにそろえた内容となっている。 BとCの首巻の教材の文法学習項目を現代の初級教科書を構成する文法学習項目のそれと比較検討したところ、Bが67%、Cの首巻が23%重なっていることが明らかになった。このことからBは主に文型や表現意図などのバリエーションを中心に会話指導を目的に編纂、Cは基本的構文を理解させ、読解に必要な基礎を習得させるために編纂されたことがわかる。明治期を通じても、初級文法学習項目が67%というのは、かなり高い数字であり、軍人を対象とした専門教材というのは明治期のみならず日本語教育史を通じてもユニークな日本語教材ということができる。
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