2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680361
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉岡 英幸 早稲田大学, 日本語教育研究科, 教授 (00092461)
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Keywords | 明治後期 / 日本語教材 / 文法学習項目 |
Research Abstract |
今年度は、上海図書館や山口大学東亜経済研究所などに所蔵される第二次大戦期以前の日本語教材の調査、収集を行い、その分類を行った。 同時に、明治後期の文法学習項目を中心に構成された以下の4種類の日本語教科書の文法項目を細かく分析し、その特徴を検討した。 A.『日語全璧』(文求堂編集局編、明治39年8月再版、文求堂書店発行) B.『日語話法』(大宮貫三著、明治40年4月、早稲田大学出版部発行) C.『日語用法自習書』(渡辺直助・楊汝梅、明治40年5月、清国留学生会館発行) D.『東語大観』(呉人達著、明治40年) 明治期の日本語教材は、文法体系を理解させるための文典型教材、文型的な学習項目を中心に構成された語法型教材、読解教材、文字教材、会話教材に分類できるが、この4種類の教材は語法型教材に分類される。そして、その中でも文型的な学習項目が列挙され、それぞれに用例を示すタイプの語法用例教材である。また、中国語母語話者を対象とし、中国語で文法などの解説や用例の対訳が行われているという特徴が共通している。 この4種類の教材に現代の日本語教科書をもとにして決められた日本語能力試験の4級、3級の文法学習項目がどのぐらい採られているかという点から調査すると、以下のようになっていることがわかった。 4級(115項目)A:108(94%)B:93(81%)C:92(80%)D:91(79%) 3級(100項目)A:79(79%)B:61(61%)C:70(70%)D:65(65%) 計(215項目)A:187(87%)B:154(72%)C:162(75%)D:156(73%) 4種類の教材とも、3級より4級の項目が多く、より基本的な文法項目に対する認識があったことがわかる。また、4種類とも、初級文法学習項目の7割以上を有しており、特に『日語全璧』は87%という高い数字を示していて、明治期全体を通して見ても稀なほど多様な項目を織り込んだ、優れた日本語教材だということができるのである。
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